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2021年1月28日 (木)

犬笛政治の果てに ⑦

続き:

おわりに――みんなの未来を目指しているのは誰か

 主に共和党が展開しトランプが新次元にまで推し進めた、カラーブラインド主義と結びついた人種とジェンダーの犬笛政治は、特定の価値観に規定された「白人男性」「白人女性」としてのアイデンティティに基づいて行動することを白人有権者に促し続けてきた。

 その結果、形式上人種を直接指示しない概念である「福祉」や「大きな政府」はとりわけ黒人と結び付けられて憎まれ、「福祉の女王」に食われてきた税金を「納税者」に返すという名目で企業や富裕層の減税が進んだ。福祉・保健・公教育やその他のセーフティーネットは縮小し、労働者を保護する規制は骨抜きにされていった。

 つまり新自由主義的な政策が犬笛の下に推進されてきたのだ。代わりに、黒人と結びつけられた「犯罪」や「麻薬」のレトリックが強圧的な犯罪取り締まり監獄国家化を促した。トランプ政権も基本的にこの路線を辿ってきた。犬笛政治は、人種やジェンダーに関するレイシスト的で家父長的な分断線を創出して、白人有権者がかれら自身、とくに労働者階級自身に不利益な政治に投票することを、「白人として」投票することだと認識するよう促してきた。

 他方、BLM は「警察予算を奪え(Defund the Police)」と叫んだ。トランプはこれを「法と秩序」を破壊する暴徒と極左の陰謀だと攻撃し、「法と秩序」の人種的意味を聴き取った多数の白人有権者に支持された。

 だが BLM は、白人を攻撃し黒人支配を作り出そうとして、警察解体を主張したのではない。セーフティーネットが奪われ法執行機関の肥大化を促進してきた政治の流れを変え、警察を狭義の犯罪対策に専念させ、公教育やホームレス支援やヘルスケアや職業訓練などに予算を投じることで、白人を含め不利な立場にある全ての人を支援することを目指している。それを「法と秩序」の敵と指弾することは、白人を黒人と敵対させようとする、犬笛政治のレイシズムの発想である。真の対決は人種間ではなく、レイシストと反レイシストのあいだにあるのだ。

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