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2021年2月12日 (金)

Clinical COVID-19 : 口腔との関連と口腔健康管理の重要性 ③

続き:

2. 臨床からみた新型コロナウィルスへの対応

 医療従事者は SARS-CoV-2への感染リスクが高い職種で、中でも歯科衛生士と歯科医師が1位と2位とされた報告(出典:米国「GOBankingRates」の「COVID-19リスクスコア」など)があるが、日本では、歯科診療を原因とするSARS-CoV-2の感染例は報告されていない(2020年11月末現在)。また、口腔衛生学会の新型コロナウィルス感染症対策検討作業部会が発表した報告によると、歯科医師のPCR検査陽性率は一般都道府県人(一般市民のこと)の平均的なPCR検査陽性率と同じであり、わが国における現状の歯科医療でのSARS-CoV-2感染リスクは特に高いとは考えられないとしている。これらのことから、歯科診療におけるこれまでの感染対策について改めて確認し、有効な要素を抽出することが重要と判断できる。

 具体的にこれまで施行してきた、以下の感染予防対策を引き続き、より注意して継続していくことが最も大切と考える。

 🔶 診療時の装備(マスク、手袋、ゴーグル、フェイスシールドなどの装着)

 🔶 治療時における唾液吸引などの飛沫防止による治療環境への配慮(適切な唾液の吸引など)

 🔶 環境及び機器等の徹底した消毒、滅菌

 また、これに加え待合室、診療室、スタッフルームにおける密閉、密集、密接の回避のための工夫も重要である。

 COVID-19に限らず、感染症対策の基本は「すべての患者のすべての湿性生体物質(血液、唾液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜など)は感染の危険性がある」という前提に立った標準予防策(スタンダード・プリコーション)と感染経路別予防策を講じることであり。COVID-19においては、これらに加え、飛沫感染、エアロゾル感染に対する対策、そして3密への対応が求められる。

 日本歯科医師会では、『新たな感染症を踏まえた歯科診療の指針』を、日本歯科医学会連合では、『新型コロナウィルス感染症について』、『新型コロナウィルス感染症関連情報』、『コロナ時代の新たな歯科システムを』作成し、感染予防の指針を示し対応してきた。

――患者への対応および歯科診療における環境整備について重要と思われる内容を挙げることとする。また、「歯科医療機関における感染予防策」についての詳細は、2020年8月発行日本歯科医師会『新たな感染症を踏まえた歯科診療の指針(第1版)』と、その抜粋である雑誌の『日本歯科医師会雑誌 1』の p23~を参照してください。

1) COVID-19感染疑い者を見つけ出すことも重要

 ベルン大学の79研究、6616例のメタ解析ではCOVID-19感染症は、無症状のまま経過する割合は20%、症状が出現する割合は80%と、ほとんどが症状があると報告。特定の地域においては、無症状者が50%や70%との報告があるが、エビデンスレベルに基づいた評価では無症状者はインフルエンザよりやや多いくらいということになる。

 診療の際は、患者の体調、味覚・嗅覚の異常の有無などについて質問する。また来院時に体温測定を行い、平熱より1度以上の体温上昇を発熱と捉え、SARS-CoV-2感染疑い者を見つけ出す一つの手段とする。このことはCOVID-19の早期発見、ひいては感染拡大防止に役立つと考える。

2) スタッフの健康管理

 歯科医療従事者が感染源とならないためにはスタッフの健康管理が大切だ。ウィルス感染症においては感染当初に、軽微なものも含め発熱変化を認めることがあるので、毎日の体温測定による基礎的な体温の把握と健康管理は感染発症を疑う手段として有効。

 具体的には、医療従事者の責務として毎日かかさず体温測定(朝・夜)、またそれを報告するシステム構築も大切。発熱、倦怠感などの症状があれば責任者に報告し、相談の上、状態によって自宅待機を考慮に入れる。

3) 院内での3密対策を講じ、摂食感染・飛沫感染などを予防する

 待合室・治療室・スタッフルームでの密閉・密集・密接の回避のため、診療予約の間隔や使用ユニットを調整して待合室の人数を減らす工夫の他、必要に応じて動線の分離、定期的な換気も実施する。スタッフルームでは対面・近接横並びの食事、密接状態での会話に注意する。

4) 換気により発症リスクを下げる

 SARS-CoV-2は、飛沫感染と接触感染が主な感染経路だが、マイクロ飛沫やエアロゾルからの感染への対応も重要だ。換気ができない部屋では、エアロゾルが3時間以上も空中に浮遊するとされる。またエアコンなどで拡散されると、普通の飛沫では届かない距離にいる人にも感染可能になってくる。SARSの際には、空調のある設備の整った病院より、窓を開け放っていt公立病院のほうが院内感染率は低かったとの報告もあり、換気の重要性が指摘された。そこで、定期的に窓開けによる換気を徹底する。窓が複数ある場合は、2方向の壁の窓を開放することで十分換気が可能である。窓が一つしかない部屋は、空気の流れを作り排気を行う。具体的には、ドアを開けて扇風機を廊下に向けて室外に空気が流れるようにする。

 また、エアサーキュレーターを用いて室内の空気を循環させることで、より効果的に室外に排出でき、別室に換気扇があれば換気口から建物外に空気を排出することがdきる。     <明日 5)、6) と続く>

 

 

 

 

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