ドナルド・トランプの危険な噓 ③
続き:
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トランプ氏の華やかな外見の闇にある精神的な問題は、ずっと前から、遅くとも2016年の大統領選キャンペーンのころから囁かれていた。2017年にはアメリカの著名な精神科医や心理学者による彼の精神状態についての寄稿を一冊にまとめた『ドナルド・トランプの危険な兆候』という本が発売されたちまちベストセラーとなった。
そこには病的ナルシシズム以外にも「重篤な社会病質」「反社会性パーソナリティ障害」「天井知らずの刹那的快楽主義者」「人間としての基本的資質である共感性の欠如」などいくつもの問題が、医学的な根拠とともに指摘されている。
「精神科医たちは敢えて告白する」という副題が語る通り、これは禁断の書である。アメリカには、「精神科医は直接診察していない人物について診断名等を語ってはならない」という「ゴールドウォーター・ルール」がある。1964年の大統領候補バリー・ゴールドウォーター氏についてのある雑誌の企画に応じて多数の精神科医が診断意見を述べたところ、氏から名誉棄損の訴訟を受けて敗訴したのを受けて、米国精神医学会が定めた倫理規定である。
それでも「敢えて」この本を発刊したのは、遠隔診療が一般化しつつある現代においてはこのルールは絶対のものとは認められないこと、トランプ氏についてはその言動の多数の実写映像を含め十分すぎるほどの情報があること、決して確定診断をつけようとするものではないことなども理由として挙げられているが、最大の理由は「彼が危険な人物であることがわかっていて沈黙を続けるのは、むしろ専門家としての倫理に反する」ことであると編者であるバンディ・リー博士は同署に記している。
出版はトランプ氏が大統領に当選した後であるから、彼をあからさまに批判すれば報復的に不利益を招くおそれも十分にあることはどの著者も十分に承知していたはずだが、トランプ氏が大統領という地位に就き、地球を何個も消滅させる威力のある核兵器を手にした人物となった以上は(しかもトランプ氏は「実際に使えないなら核兵器を保有していて何の意味があるんだ?」と何回も述べている)、その危険性を警告する義務が専門家にはある。それが著者らに共通する信念であった。
著者の中には『トランプ自伝』を彼に代わって執筆するため何百時間も直接に彼の話を聴いた作家も含まれている。「トランプについて知れば知るほど、イデオロギー情熱もなく、ただ自分の目先の利益しかないことがわかってきた」と断言している。
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