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2021年2月16日 (火)

Clinical COVID-19 : 口腔との関連と口腔健康管理の重要性 ⑦

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1) 口腔細菌の誤嚥が ACE2の発現を増加させ SARS-CoV-2の感染を促進する可能性

 ウィルスや細菌が感染する際、特定のレセプターへの結合が重要となる。SARS-CoV-2のレセプターであるACE2は、喫煙などの刺激によりその発現が高まることが報告されているが、これまでに他の微生物による発現の上昇は報告なし。歯周病原菌が誤嚥されると、歯周病原菌自体や病原因子の刺激により、肺や気管支などで ACE2の高まる可能性がある。実際に歯周病原菌は、肺炎起因菌のレセプターである Piatelet-activating factor receptor の発現を高めることが報告されている。また、P.gingivalis が産生するプロテアーゼが気道粘膜の表面タンパクを分解することにより、インフルエンザウィルスのレセプターの発現が高まる可能性も示されている。実際に筆者らは、歯周病原菌が肺胞上皮細胞において、ACE2の発現を遺伝子および蛋白レベルで誘導することを見出した(論文投稿中)(図略)。また、この事実は歯周病原菌によって舌や歯肉など口腔で ACE2の発現が促進されると、SARS-CoV-2の口腔への感染も高まることを示唆している。すなわち、歯周病原菌の誤嚥は、ACE2の発現を増加、SARS-CoV-2の感染促進の可能性がある。

2) 口腔細菌の誤嚥が炎症性サイトカインの分泌を促し肺炎症が増悪する可能性

 COVID-19患者において、ARDSなどの重篤な呼吸障害は死亡の主原因になるが、ARDSを引き起こす要因としてサイトカインストームの関与が指摘されている。特に、IL-6、IL-8、TNF-α などの炎症性サイトカインやケモカインの上昇が死亡率と関連し、重症者は過剰な炎症状態にあると考えられている。そのため、COVID-19に対する治療薬として、抗ウィルス薬の他に宿主お炎症を抑える薬剤も注目されている。筆者らは、歯周病原菌が気管支、肺胞および咽頭の上皮細胞から大量の IL-6や IL-8 等の炎症性サイトカインを誘導することを報告した。この結果は、細胞株のみならずヒトから採取された呼吸器上皮細胞においても認められた。また、マウスに歯周病原菌を誤嚥させた結果、肺や気管支に加え、血中においてもIL-6とKC(マウスのIL-8)が強く誘導された。その量は、肺炎球菌によって誘導される量よりも数倍以上の量であった。また、P.gingivalis の産生する酵素ジンジパイン自体がマウスの肺炎を惹起することも報告されている。

 従って、COVID-19患者において、歯周病原菌の誤嚥が起こると大量の炎症性サイトカインが誘導され利ため、ウィルスによる肺炎症と相まってCOVID-19が重症化する可能性がある。

3) 歯周病原菌のプロテアーゼが SARS-CoV-2の Sタンパクを分解することによりウィルス感染を促進する可能性

 インフルエンザウィルスは細胞への吸着時、HAが、HA1とHA2とに分解されることが必須だ。この分解が細菌のプロテアーゼでも起こると知られている。SARS-CoV-2の感染時、Sタンパクが、プロテアーゼ TMPRSS2 や furin などによって切断されることが、細胞との吸着と融合に重要。

 TMPRSS2や furin は ACE2同様、口腔にも発現していることが知られているが、歯周病原菌の産生するプロテアーゼによってもSARS-CoV-2のSタンパクが切断され、SARS-CoV-2の感染性が高まる可能性がある。

4) 口腔細菌が呼吸機能の低下と肺胞や上皮細胞バリアの破壊を促進する可能性

 呼吸器におけるムチンの過剰産生は喀痰過多の原因となるのみならず、気管支の狭窄をももたらすことから呼吸機能の低下につながる。筆者らは、ヒト由来の気管支上皮細胞において、P.gingivalis のジンジパインが関与していた。さらに、マウス肺においてもMUC5ACの発現とムチンの産生がP.gingivalisにより強く誘導されたが、ジンジパインが欠損した P.gingivalis ではそのような作用は認められなかった。

 P.gingivalis のジンジパインは、肺においてムチンの過剰産生を誘導することにより、気管支の狭窄を引き起こして肺機能を低下させる可能性が示唆された。さらに、口腔細菌が肺胞や気管支上皮細胞のバリア機能を破壊することを、細胞およびマウスレベルで確認している。従って、口腔細菌の誤嚥により呼吸器上皮細胞のタイトジャンクションが破壊された結果、ウィルスや肺炎起因菌などの侵入が容易となり、二次感染が起こりやすくなることも考えられる。

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