« ドナルド・トランプの危険な噓 ⑥ | トップページ | Clinical COVID-19 : 口腔との関連と口腔健康管理の重要性 ② »

2021年2月10日 (水)

Clinical COVID-19 : 口腔との関連と口腔健康管理の重要性 ①

今井健一(日本大学歯学部細菌学講座・生体防御医学研究所生体防御部門教授)さん、及び小林隆太郎(日本歯科大学付属病院口腔外科教授)さんの研究論文を上述する。 コピーペー:

は じ め に

 新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の流行から間もなく1年、いまだ感染の勢いが収まらない。2020年11月末時点で全世界の感染者数は6300万人を超え、これまでに150万人以上もの人が亡くなった。

 医学の進歩の歴史は、感染症との闘いの歴史と言っても過言ではなく、これまでもパンデミックは繰り返されている。1347~1352年に流行したペストは、モンゴル軍のヨーロッパ遠征により感染拡大が起こり、死者はヨーロッパだけで約3000万人(人口の4割近く)、全世界で推計5000万人に上がった。その後も感染は繰り返し起こっており、最近のWHOの報告によると、2010~2015年の報告数は3246人、死亡者は584人に上る。1918~1920年のスペイン風邪は、アメリカの陸軍兵舎で発生し、その後ヨーロッパやアフリカへの派兵とともに全世界に拡大した。第一次世界大戦中のため、交戦国では報道規制により情報は明らかにされなかったが、中立国のスペインでは感染拡大の報道がなされた。死者は約4000万人、患者数は推定で5億人(当時の世界人口は約18億人)とも言われている。日本でも患者数は約2300万人、死亡者数は約38万人に上った。死亡例の多くは細菌の二次感染による肺炎によるものであった。

 パンデミックの重要な要素は、ヒトの移動と3密(密閉・密集・密接)環境が関わる感染拡大だ。ペストの時代、ベネチアの医師は、仮面カーニバルでよく見かけるようなクチバシ付きマスク(クチバシに薬草をしみこませた綿を詰め込んだ)、革手袋、長いコートに杖を持ち、ソーシャル・ディスタンスを保ち感染を防ごうとした。このことは、現在のコロナ禍の個人防護具、3密対応にもつながる話である。

 口腔はウィルスの侵入門戸であると同時に、ウィルスと宿主との相互作用が最初に起こる場所でもある。また、口腔の細菌とウィルスは血液や唾液を介して全身に運ばれるため、口腔疾患を単に口腔内に限局した疾患としてではなく、全身に影響を及ぼす疾患として捉える必要がある。そのため、口腔細菌や歯周病などの口腔疾患がCOVID-19を含めたウィルス感染症にも影響を及ぼしている可能性は十分あると考えられる。

 従って、COVID-19を口腔の視点から考えることは重要だ。SARS-CoV-2が口腔に感染している可能性や、唾液が感染者の早期発見に有用であること科学的に分かってきた。慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺炎などの呼吸器疾患や糖尿病等の基礎疾患を有する SARS-CoV-2 感染者は、重症化しやすいことや死亡率が高いことが報告されているが、これらの疾患は歯周病や口腔細菌と関連していることも指摘されている。

 SARS-CoV-2 とCOVID-19 に関しては、短期間のうちに多数の緩急報告が積み重なり多くのことが分かってきた。ここでは、臨床からみたSARS-CoV-2 対策について、その具体策を述べるとともに、今井、小林らが先に執筆した総説以降、この数か月の間に新たに発表された研究成果を中心に、SARS-CoV-2/COVID-19 と口腔との関連を紹介し、感染症時代における口腔と口腔健康管理の重要性について考察する。

 

 

 

 

 

 

 

« ドナルド・トランプの危険な噓 ⑥ | トップページ | Clinical COVID-19 : 口腔との関連と口腔健康管理の重要性 ② »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事