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2021年2月13日 (土)

Clinical COVID-19 : 口腔との関連と口腔健康管理の重要性 ④

続き:

5) 家庭内外での感染について

 現在、COVID-19の家庭内感染もよく言われているが、マスクを外して過ごす家庭内では、特に体調不良などの発見に気を配る必要がある。Lancetの興味深い後ろ向きコホート研究で家庭内外での感染リスクの高い行動が示されている。

(1) 家族

 ①寝室の共有

 ②SARS-CoV-2感染者との30分以上の会話

(2) 家族以外

 ①SARS-CoV-2感染者2人以上の人と接触

 ②SARS-CoV-2感染者との30分以上の会話

 ③SARS-CoV-2感染者との車の同乗

 家庭内においては、家族の行動内容により注意すべき内容をそれぞれ検討、実行し、一般の社会環境、また診療環境においては、改めて基本的な環境対策の徹底が重要となる。やはり、相互の距離を保つこと、長時間の会話を避けること、マスクをすることが重要な事項であるという結論になる。

 特に感染拡大時において医療従事者として大切なことは、院内に感染を持ち込まないために家庭内および生活、社会活動で油断のない感染対策を意識することが求められる。

6) 環境対策と口腔健康管理

 COVID-19の重症化を防ぐためにも、口腔健康管理による基礎疾患の予防・改善が重要。インフルエンザや HIV 感染症などにおいても口腔細菌との関連性が指摘されており、歯科治療(口腔機能管理、口腔衛生管理)や日常の歯磨きなどの口腔ケアを含む口腔健康管理が重要と考える。

3. SARS-CoV-2と口腔との関連

1) COVID-19患者の口腔症状と口腔におけるACE2 発現意義

 口腔とSARS-CoV-2/COVID-19との関連に関する研究はいまだ数が少ないものの、次第に興味深い関係が明らかとなりつつある。COVID-19の初期症状として、味覚異常と嗅覚異常が起こることがよく知られているが、これは ACE2が舌粘膜に多く発現し、SARS-CoV-2が舌粘膜等に感染した結果、味覚障害が生じている可能性がある。様々な組織におけるACE2の発現をデータベースで調べた結果、肺や腸管で高い発現が認められるとともに、口腔、特に舌粘膜に ACE2が発現している。

 COVID-19患者の検体ではないが、ヒトの舌背や歯肉の重層扁平上皮に ACE2と TMPRSS2 の発現が免疫染色で確認されている。furin も主に扁平上皮の下層に局在し、TMPRSS2とfufinは唾液中にも認められた。19か国10228人が参加した40報の研究を総括した結果、味覚障害(45%)が、最も普遍的な口腔症状で、そのオッズ比は12.68であった。味覚障害には程度があり、味覚異常が38%、味覚鈍麻が35%、味覚消失が24%であった。査読前の論文ではあるが、ウィルス量と味覚消失とが相関するとの報告もある。筆者は、発熱外来においてSARS-CoV-2感染疑い者の検査に同席した経験を有するが、濃厚接触者で味覚障害を訴える場合は、検査後、SARS-CoV-2感染が判明する割合が極めて高いことを身をもって体感した。

 その他、口腔における臨床症状には、潰瘍、小水疱、小出血、口腔カンジダ症などがあげられ、舌、口蓋、口唇、歯肉、頬粘膜が侵される。しかし、これらの症状はSARS-CoV-2の感染によるものなのか、免疫機能低下等による二次的現象、もしくは重感染によるものかはよく分かっていない。

 

 

 

 

 

 

 

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