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2021年2月15日 (月)

Clinical COVID-19 : 口腔との関連と口腔健康管理の重要性 ⑥

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4) COVID-19のための新たな口腔検査法の可能性

 COVID-19検査において唾液検査は広く行われるようになったが、寝たきりや、入院中の方や小児などにおいては、唾液を吐くこと自体が不可能な場合が多い。また、特に高齢者や体調が悪い方は、検査をできるだけの十分な唾液が採取できないケースがあることを、筆者は実際の発熱外来で経験している。さらに、唾液を吐くこと自体が飛沫を発生したり、唾液回収容器の汚染による接触感染の恐れもある・実際の発熱外来等においては、被験者自身で唾液を採取する場合、直径約2~3cm程のチューブに唾液を吐いてもらう場合が多く、せき込みながら唾液を吐く人、回収チューブの外に唾液が垂れてしまう人を多く見た。感染拡大が続き、検査が足りていない状況や老人ホームや要介護施設等でのクラスター発生が問題となる中、より多くの人が簡便に検査を受けられる検査法の確立が期待されている。筆者は、ACE2が舌に多く発現していること、また、米国等では HIV の検査が口腔粘膜を拭うことで実施されることにヒントを得て、綿棒で舌や口腔粘膜を拭うだけで、COVID-19の検査ができるのではないかと考え、臨床研究を進めている。舌背には、ACE2が多く発現しているため、綿棒で舌や口腔粘膜を拭うことにより、唾液中に含まれるウィルスのみならず、舌に吸着、もしくは感染しているウィルスを細胞ごと回収できる可能性があり、通常の唾液検査より感度が増す可能性も考えられる。また、綿棒で口腔内を拭うだけであれば、自宅においても自身で簡単にサンプル採取ができるため(郵送検査等)、より多くの人が簡単、かつ飛沫や汚染を生じることなく検査を受けることができ、検査自体の裾野も広がる可能性がある。

 一方で、唾液中には RNA 分解酵素が豊富に存在し、それで、唾液の保存や取り扱い、また、ウィルスゲノムのどの部分をPCR のターゲットにするのかなどによっても、結果が異なる可能性も考えられる。COVID-19の検査において唾液が注目されるに至ったが、唾液は、他のウィルスや細菌感染症を特定するための重要な検体となり得る可能性がある。今後の唾液研究の発展、また歯科界からの研究成果の発表に期待がかかる。

4. COVID-19進展と口腔細菌との関連~肺炎増悪のメカニズム~

 近年、歯周病原菌をはじめとする口腔細菌が、誤嚥性肺炎、インフルエンザおよび COPD などの呼吸器疾患の発症や増悪に深く関係していることが分かってきた。実際に、肺炎や COPD 患者の気管支肺胞洗浄液や喀痰から歯周病原菌を含む口腔細菌が検出されることや、重度の歯周病患者においては肺炎や COPD の死亡率や発症リスクが高まることが知られている。従って、口腔のみを対象とした、また単一の微生物のみに着目した研究では、感染症の全体像を理解することが難しく、口腔を呼吸器系および消化器系の入り口・一部として考えることが重要だ。

 また、感染症の発症と進行おいては、微生物と宿主との相互作用に加え、ウィルスと細菌との微生物間相互作用が複雑に絡み合っている。例えば、スペイン風邪の死者の多くが最近の二次感染にものであったこと、また、季節性インフルエンザでは、ウィルス感染のみの場合には比較的軽症で済むが、細菌との共感染が起こると重症化して死亡率も高くなることが知られている。さらに、2003年に世界で流行した sars-CoV-1の研究で、コロナウィルスが細菌と混合感染することで重症化することが分かっている。

  COVID-19における重感染や続発性細菌性肺炎に関する報告はまだ少ないが、感染者の気管支肺胞洗浄液や痰などから、SARS-CoV-2 とともに肺炎起因菌である Pseudomonas aeruginnosa や Klebssiella pneumoniae など多くの細菌が検出されている。また、ARDS で侵襲的人工呼吸を行った COVID-19 患者において、Staphylococcus aureus、Haemophilus influenzae、Streptococcus pneumoniae との重感染が認められた。重症者では好中球数が増加しているとの報告や、多くの患者に抗生物質の投与が行われていることからも、COVID-19重症者における細菌の二次感染の関与が疑われる。興味深いことに、COVID-19患者の気管支肺胞洗浄液から Veillonella、Prevotella、Campylobacter、Treponema、Fusobacterium などの口腔細菌が検出されることが最近報告された。

 したがって、COVID-19 患者において口腔の不衛生による口腔細菌誤嚥により、下気道の炎症が増悪する可能性がある。特に、高齢者や有病者では、嚥下機能の低下により誤嚥の確率が高くなるため、より細心なケアが必要である。誤嚥された口腔細菌は、下記のようなメカニズムを介して、SARS-CoV-2の感染を促進したり、ウィルス性の肺炎症を増悪させることにより、COVID-19を含む呼吸器疾患の進展に関与している可能性がある。

 

 

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