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2021年3月16日 (火)

生物多様性とは何か、なぜ重要? ④

続き:

史上最悪の絶滅の時代へ

 近年、人間活動の肥大化にともない、野生動物の絶滅が急速に進行して、生物多様性が劣化していることが、重要な地球環境問題の一つとなっている。生物多様性の危機的状況を受けて、政府間組織「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学ー政策プラットフォーム(IPBES:Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services)」が、2012年4月に設立。この組織は、世界中の生物多様性にかかわる研究成果を分析して、政策に反映させることを目的としており、毎年、評価テーマを設定、世界中からスペシャリストを招致してミーティングが開催されている。五箇自身も委員の一人として参画している。

 このIPBESが2019年5月に発表した最新のレポートによれば、地球上の陸域の75%は人間の手によって改変されていること、現時点で100万種の動植物が絶滅の危機に瀕していること、この絶滅速度は、過去1000万年間における絶滅の平均速度を10倍~100倍も上回ること、が報告されている。つまり、現代は大絶滅の時代に入っていると研究者たちは警鐘を鳴らしている。

 生物進化の歴史40億年の間には地球上の生命の7o%以上が死滅する大絶滅というイベントが最低でも5回は起きているとされる。これらの大絶滅は、地殻変動や巨大火山の噴火、隕石の落下等、自然現象による大規模な地球環境変動が原因と推測されている。いずれの大絶滅においても、その絶滅速度は化石データからの検証よれば200万年以上の長い時間をかけて徐々に進行したと考えられている。ところが現在、人間が引き起こしている環境破壊は、熱帯林の奥地から極地の氷上に至るまで、地球上のいたる所に影響が及び、生物の絶滅速度は、過去の大絶滅よりも圧倒的に早いとされている。正に現代は、史上最悪の絶滅の時代と言っていい。

史上最悪の速度で進行する地球温暖化

 過去の大絶滅の中でも、最も大規模な絶滅はペルム紀末期(2億5000万年前)の大絶滅で、地球上の生物の95%が死滅したとされる。その原因は、シベリアトラップという現在のシベリアの大地の 1/4ほどを占める大規模な火山噴火であるのだ。割れた大地から200万年間にわたって溶岩と温室効果ガスが放出され続け、この時に大気中に排出された炭素量は累計 14兆5000億トンにも上ったと推定されている。この大量の温室効果ガスによって地球温暖化が進み、海水温が 14~18℃も上昇したことで多くの生物が死滅したと考えられている。

 ところが、現在の温室効果ガスの 1年当たり排出速度は、このペルム紀の大絶滅時代よりも速いとされており、このまま放置すればペルム紀末期以上の悲惨な気候危機が引き起こされる恐れあり。

人間活動の拡大によって破壊が続く生態系

 気候危機以上に短期間に急速な絶滅をもたらしている要因が、生息地の破壊・汚染・乱獲・外来生物の移送だと指摘される。特に生物多様性の宝庫とされる熱帯雨林破壊の進行が、地球全体の生物多様性劣化の大きな要因とされる。これら熱帯林を保有する地域のほとんどが開発途上国であって、経済発展のために森を切り出し、焼畑農耕地や牧畜エリアを拡大させていることが熱帯雨林減少のバックボーンにある。そして、これらの国々から輸出される林産資源や農産物を消費しているのは、我々日本を含む先進国だ。

 また、これまで自然界に存在し得なかった合成化学品は環境中においても分解されにくく、農薬やマイクロプラスチックなど様々な化学物質が生物の生息環境を汚染、生態系に深刻なダメージを与えているのだ。

 更に人間の人口増加に伴って、野生生物を資源として大量に捕獲する乱獲が進行して、野生生物集団の減少に拍車をかけている。象牙(アフリカゾウの牙)やベッコウ(ウミガメの甲羅)など装飾品目的で多くの野生動物が犠牲となっており、イワシやタコなどさまざまな水産資源が、消費量の増大とともにその数が激減しているとされる。最近では二ホンウナギが土用の丑の日でもなかなか手が出せないほどの高級食材となっているが、これも乱獲が祟って、二ホンウナギが絶滅危惧種に指定されるまで数が減ってしまった結果だ。

 このように、世界経済の南北格差や、先進諸国における利便性追求のライフスタイルと大量消費によって生態系が破壊され続けていることが生物多様性劣化の根本原因となっている。

 

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