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2021年3月20日 (土)

生物多様性とは何か、なぜ重要? ⑧

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 もともと地球上に登場して間もない人間という種は、脆弱な裸のサルであり、あらゆる野生動物にとって格好の餌食となる生態系の最弱動物だったと想像される。そんな弱い動物だった人間が現在の繫栄を手に入れることができたのは、人間が、道具を使って、狩猟して、火を使いこなし、さらにコミュニケーションにより情報伝達を行なうという、知性と文化を手に入れることで、様々な天敵、疾病、および自然災害の危険から多くの命を守れるようになったからである。

 もっとも、人間は文明を手に入れてすぐに、現在のような巨大なバイオマスに成長したわけではない。人間が、斧やクワなど、自力で道具を使い、限られた活動しかできなかった時代は、まだ生態系の中でバランスがとれる存在であった。

 人間が、生態系システムの「許容範囲」から大きく離脱し始めたのは、産業革命以後、化石燃料の利用を開始したときからであった。人間は、飛躍的な破壊能力および移動能力をこの化石燃料の燃焼エネルギーによって手に入れることができたのである。このエネルギー革命により人間は、すべての生物の頂点に君臨する、生物史上最強の消費者と化した。

 あらゆる生物から資源を搾取し、寄生生物からの攻撃を抗生物質で封じ込めることで、人間は高い生存率と長寿命を獲得、ひたすら増え続けた。そして、今、増え過ぎた人口を支えるために、乱獲や農業面積の拡大をさらに加速させて野生動物の生息域と資源を奪い続けている。

 そして、生物進化の歴史には登場し得なかった、人工的に生産されたプラスチックなどの化学物質は、自然環境で消費・分解されないまま、残留・蓄積して、環境汚染の引き金となった。一連の人為的環境破壊活動の果てに排出される大量の温室効果ガスも、もはや自然の森では吸収しきれず、地球温暖化に結びついている。

 結局のところ、生物多様性の劣化、廃棄物汚染および地球温暖化という重大な地球環境問題は三位一体であり、その根源は人間によるエネルギーおよび資源の大量消費、そして結果としての大量廃棄にある。正に人間こそが地球最大の寄生生物と言っていい。

 そして、この増えすぎた「寄生生物」の個体数を調節すべく、自然界から送り込まれてきた最新鋭の天敵こそが新型コロナウィルスだったのである。

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