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2021年3月24日 (水)

プラスチック依存社会からの脱却 ①

高田秀重(東京農工大学農学部環境自然科学科教授)さんはマイクロプラスチックのモニタリングを行なう市民科学的活動「International Pellet Watch]」主宰。 「世界 3」に上述しています コピーペー:

■ パンデミックとプラスチック

 軽くて丈夫で、様々な形状や性質に造形が可能なうえ、安価かつ豊富に供給されるプラスチックは、いまやそれなしの生活など多くの人にとって想像できないほど、私たちの生活に浸透している。

 昨年からの新型コロナウィルスの世界的な感染拡大、長期化するパンデミックのもと、「新しい生活様式」が唱えられているが、プラスチックに依存する社会の問い直しは、その視野の中に入っているのだろうか。

 深刻化する環境危機への対応の一環として、2020年7月からレジ袋の無償配布が規制されたように、プラスチックを安易に使用する風潮には歯止めがかかりつつあるようにも見える。しかし、一方で、コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急使用として、大量のプラスチック製品が生産され、消費されている。たとえばマスクはその象徴といえよう。感染防止は喫緊の社会的課題であり、その合理的な使用は避けられない面がある。しかし、同時に、プラスチック製品の大量の使用がもたらしかねない問題についても、同様に視野に入れておくべきである。

 プラスチックの大量使用とは、一般論として環境面への負荷が高まるというだけでなく、まさに我々自身の健康や生命の問題として跳ね返ってくる問題でもある。

 化学物質汚染の拡大が、ヒトの神経系・内分泌系・免疫系の異常をもたらしていることを明らかにしている研究は数多い。こうした異常をヒトにもたらす化学物質の、すくなからぬ発生源がプラスチックにほかならない。

 コロナウイルスの感染状況を地域ごとに詳細に見ていくと、いわゆる先進国を中心に深刻な状況が発生していることがわかる。この感染状況と、ある種のプラスチック由来の汚染物質(臭素系難燃剤など)の濃度分布は重なっている。その因果関係は不明としても、相関関係にあることは見てとれる。

 コロナウイルス感染症の重症化との関連では、内分泌攪乱物質が様々なメカニズムで免疫系を攪乱することが懸念される。たとえばポリ塩化ビニルの可塑剤として使用されるフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)は、粘膜細胞の接着タンパク質の生合成を阻害する可能性が指摘されている。

 粘膜細胞の接着の弱体化により、ヒトの体内へのウィルス等の侵入を招き、サイトカインストーム等の免疫攪乱を誘導することが懸念されている。難燃剤の一種、臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)は甲状腺ホルモンの減少を通して、免疫力の低下をもたらす。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の一種 UV-326 は薬物代謝を活性化させ、ビタミンAの代謝を促進、免疫力低下を引き起こす。このように、内分泌攪乱物質は様々なメカニズムで免疫力の低下を引き起こす。

 プラスチックは石油から製造されるが、生産の過程では難燃剤・可塑剤・酸化防止剤・剝離剤・着色料・紫外線吸収剤など、多くの化学物質が添加剤として使用している。そしてこの添加剤の中に内分泌攪乱物質が多く含まれていることに注意を払わなければならない。最近、ヨーロッパでの大規模な疫学調査の結果、ヨーロッパの成人男子の精子数が過去40年間で半減していることが報告された。原因は特定されていないが、プラスチックに含まれる化学物質も原因物質の候補として挙げられている。その他にも子宮内膜症や乳がんの増加など、生殖に関する疾病の増加が各地で報告されている。

 多くの要因が関与しているが、プラスチックに生殖に影響を与える添加剤が含まれていることは事実だ。

 

 

 

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