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2021年3月 5日 (金)

生物多様性条約 ④

続き:

■ 「全体最適」を目指す

 IPBES をはじめ、国連機関、国際機関、各国政府がこの問題打破の仕組みとして考えているのが、前に述べた「生物多様性条約」で交渉が続ている「ポスト2020枠組み」である。

 生物多様性条約は、196カ国の総意という形で、「生物多様性」という大きな概念のもと、国際協力や各国の取り組むべき方向や、目標設定を行なえる枠組み条約である。京都議定書、パリ協定といった CO2排出のルールメイクができる気候変動枠組み条約と似ているところがある。パリ協定のように「世界の気温上昇抑制目標を設定する」、すなわち、「実質のCO2総排出量に上限を設定する」といった分かりやすい数値目標を設定できるかどうかの交渉が「ポスト2020枠組み」であるが、その前に、生物多様性条約がもつ国際条約の中でも特殊な位置づけ、自然環境に関する「全体最適化」機能を紹介する。

国際条約の進展を、196カ国に波及させる

 例えば、環境アセスメントという、自然に何らかの改変を加える際に、その改変がもたらす環境への影響を評価し、影響低減や回避策を検討するプロセスがある。この手続きは経済発展とも深くかかわるため、各国内のパワーバランスにより、制度設計やその強制力に差がある。2000年代、ラムサール条約(171カ国)は、条約の保全対象である「湿地」の環境アセスメント手続きについての基準と指針を作成し、締約国が合意。生物多様性条約(196カ国)では、そのラムサール条約決議を基礎に、対象を「生物多様性」としてより広範な手続きへと改良を加えたのち、196カ国の合意文書にまとめ上げた。当然であるが、生物多様性条約単独でこのような指針を作成することも多々ある。このように、個別課題や施策の優良事例を、全体波及させる力がこの条約の機能の一つになっている。

■人と自然に関する課題の論点整理とフォーラムの設定

 地球の7割を占める海洋は、実はそのほとんどがどこの国の領海にも属さない「公海」という空間だ。誰のものでもないということは、誰も適切に管理をしない、できないということになる。しかし、この保全の在り方は、将来世代も含めて、あるいは公海に生きる生命も含めて、重要関心事項だろう。生物多様性条約も、その効力は公海までは及ばない条文で明記されている。

 生物多様性条約は、「重要海域はどこかを検証する」という仕事は生物多様性条約の枠組みの中で、保全や持続可能な利用については国連総会下の作業(国連海洋法条約(加盟国168カ国)の追加ルール検討)に委ねるといった、整理を行った。

 このように、どの枠組みで何を検討するかが定まっていない議題が世の中にある。生物多様性条約は、「生物多様性に関する新規の緊急課題」をどう扱うかを検討、決定をできる機能を持った稀有な条約でもある。

 

 

 

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