アムネスティ通信 ―――治安装備にも規制が必要
雑誌「世界 3」より コピーペー:
拷問は如何なる場合でも許されない――拷問の絶対禁止を掲げた拷問等禁止条約は、1984年に国連総会で採択された。ここでいう拷問とは、公務員など公的な立場にある者が情報や自白を引き出すため、あるいは罰則として、肉体的・精神的に人に苦痛を与えることを指す。30年以上前に、違法行為とされたにもかかわらず、今も世界各地の刑務所・拘置所で拷問が行われ、時に死をもたらしている。
拷問にはそれを支える道具がある。金属性のスパイク付きの警棒、電気ショックを与えるベルト、胴や手足部分を感電させながら人を取り押さえる道具……。拷問行為を禁止する一方で、拷問に特化した器具の売買が許されているのは、まったくナンセンスだ。
拷問の道具を規制しようという動きは、ある。2017年9月、EUはアルゼンチン、モンゴルと共同で、死刑や拷問に使われる製品の国際取引根絶を目指し「拷問に関与しない貿易のための国際的提携」を発足させた。現在加盟国は60を超える(日本は入っていない)。
この国際アライアンスは、拘束力のある条約といった国連の枠組みを使って、拷問器具の取引を止めるべく動いている。
国連もこの動きに呼応している。アライアンスが発足した年末、国連総会で採択された拷問撲滅に関する決議では、拷問専用器具の製造、輸出入、使用を禁じる措置を各国に求めている。2019年には、拷問器具取引の国際共通基準確立のため、加盟国の意見収集をするよう事務総長に求める決議が採択された。
アムネスティは創立間もないころから拷問の問題に取り組んできた。政治囚の解放のための活動をする中で、世界各地で政府から拷問を受けているという報告が日常的に舞い込むようになる。当時、拷問を禁止し抑制する圧力はあったものの、拷問を犯罪として裁くまでには至っていなかった。そこでアムネスティは拷問の存在を広く知らしめ、拷問を禁止し予防する制度の創設を求める活動に着手したのだ。拷問等禁止条約の成立にも、深く関わっている。
2020年12月に国連でこの件に関するハイレベル会合が持たれた。アムネスティはそれに先立ち、英国の調査会社とともに、取引規制のための枠組みを提言した。さらには、世界中で起きている抗議活動に対し、治安当局が催涙ガスやゴム弾など過度な武力を使って、死者・負傷者を出していることから、拷問器具だけでなく、治安装備に関しても規制が必要だと訴えている。
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