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2021年3月30日 (火)

プラスチック依存社会からの脱却 ⑦

続き:

いかにプラスチック依存から脱却するか

 プラスチックという物質は、大量生産と大量消費により地球環境とヒトを含む生命・生態系を傷つけてきた現代文明の象徴とも言えるだろう。多くの犠牲を生み出した20c.の公害の教訓を踏まえるとき、便利・安価だからといってこのまま漫然とプラスチックを使い続けようとすることは許されない。プラスチックに依存する社会からいかに脱却していくのかを早急に検討していくべきである。

 プラスチック問題は、ここで述べてきた化学物質汚染の観点とともに、資源問題、廃棄物管理の視点からも考える必要がある。資源問題としては、パリ協定でうたわれている「実質的な温室効果ガスの発生をゼロにする」を前提とすれば、化石資源から作るプラスチックは今世紀後半以降、生産できなくなる。廃棄物管理の観点からも、プラスチックの埋立や焼却が持続可能なオプションではないことは明白だ。一方、リサイクルについても、プラスチックという素材の特性、すなわち炭素ー炭素の単結合がいずれは切れるという宿命から、無限にリサイクルできるわけではなく、また、リサイクルするためにはエネルギーも必要で、リサイクルも限定的だ。

 地球温暖化を止めるためには、石油ベースのプラスチックの生産自体を削減する必要。そして総合的に考えて、プラスチックは削減しなければならない。

 そのためには、物流や商品の生産・提供方法を根本的に変えないといけない。過剰包装の削減はもちろん、使い捨てから再使用への転換、プラスチックのバイオマスへの置き換えを促進する必要がある。その上で、どうしても必要なプラスチックは、石油ベースからバイオマスベースの素材に転換して、安全な添加剤を使い、可能な限り再利用・リサイクルを行なっていくことになろう。添加剤の安全性については、予防原則的な観点から含有試験を導入し、安全性が確認された添加剤のみを配合するような仕組みを作る必要がある。

 一方、現在大量に使っている石油ベースのプラスチックを全てバイオマスベースのプラスチックに置き換えれば、食糧生産の逼迫や森林破壊を招くので、バイオマスベースであるにしてもプラスチック全体の生産量は減らしていく必要がある。食品包装プラスチックは、コンポスト化できるような生分解性プラスチックに替えていくことも、焼却炉に依存しない廃棄物管理・適正な物質循環を形成する上で重要だ。

 コロナウイルス感染症拡大対策として、プラスチック製容器によるテイクアウトが増えているが、プラスチックには内分泌攪乱作用を持つ添加剤が含まれていることも意識し、少なくとも飲食へのプラスチックの使用が最小限になるような提供法を導入することだ。ペットボトルの濫用、使い捨てプラスチックによるテイクアウトを「ニューノーマル」にするような安直な考え方は避けるべきだ。

 過度なグローバル化から、生産者と消費者の信頼関係が成立範囲で物資が流通・循環するような分散型持続可能な社会社会へ、グリーン・リカバリーの中にプラスチック問題を位置づけた制度設計が必要。

 過去半世紀にわたって私たち人類は、短期的な経済効率を優先させ、それまで金属やガラス・陶器で作られていたものを急速にプラスチックに置き換えてきた。それらが微細なプラスチックとなって、私たちヒトを含む生態系の隅々まで汚染し、地層の中にマイクロプラスチックが刻まれる人新世を作ってしまったことを、半世紀経って、やっと認識したことになる。プラスチックの使用自体を見直す必要があるだろう。

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