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2021年3月19日 (金)

生物多様性とは何か、なぜ重要? ⑦

続き:

生物多様性劣化と地球環境問題

 地球上のすべての生物は、生態系というシステムに組み込まれ、生かされている。生態系の中では、太陽エネルギーによって植物が CO無機塩(窒素やリン)を材料として光合成を行い、Oと有機物を作り出し、それを一時消費者である草食動物が利用して繫殖し、さらにその草食動物をその上の消費者である肉食動物が利用する、という具合に、生物の階層性が構築されている。

 全ての生物は死ねば屍と化して、細菌や菌類によって無機質へと分解され、再び光合成の原材料として活用される。まさに無駄のない完全循環型システムとして生態系は維持されている。

 このシステムには物理的制約による重要な構造が存在する。生物は、エネルギーを栄養として活動に消費するため、その生物に蓄えられる栄養量は、食べた量より減ることになる。従って各階層で利用できる資源の量は、生態系の上位にいくほど減少する。そのため、生態系の上位に立つ生物ほど、必然的に生物量(バイオマス)=(個体数×体重)が小さくなるという、ピラミッド構造が作られることになる。このピラミッド構造によって、生態系は持続的な物質循環と生命活動を支えてきた。

 ところが人間の登場がこのシステムに狂いを生じさせることとなった。我々人間は、いま、77億人にも上る巨大なバイオマスとして、この生態系ピラミッドの頂点に立ち、大量の生物資源を消費続けている。

 そもそも、霊長類の中でも比較的体重量が大きい人間という動物が、本来の自然生態系のなかで生きられる個体数は、極めて限られた数値となる。人間にもっとも近い霊長類である類人猿のチンパンジーやゴリラの野生集団における個体数をもとに概算しても、人間という動物が自然生態系において生息可能な個体数は、地球全体で多く見積もって500~1000万頭が限界ではないかと、推測される(火も道具も使わないで、野生の生き物として自然生態系のなかで生きた場合に、これだけの数しか生きていないであろう。ということである)。

 この推定値は推定と言うにはあまりにいい加減な数値だ、統計的な推計をすればもっと大きな幅があると考えられるが、それでも、現在の地球総人口 77億人という数字は、明らかに、生態系の許容範囲を逸脱していると断言できる。

 

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