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2021年3月28日 (日)

プラスチック依存社会からの脱却 ⑤

続き:

生物を襲うマイクロプラスチック

 海を漂うプラスチックの最大の問題は、海に生物が餌と間違えて、あるいは餌と区別できずに、食べてしまうこと。

 クジラやウミガメなど比較的大きな海洋生物によるプラスチックの摂食は1970年代から報告されてきた。海の中で劣化し微細化したプラスチックは、そのサイズに応じて様々な生物に取り込まれる。

 レジ袋などを含む比較的大きなプラスチックごみについては、クジラなどの大型動物の消化管を閉塞させて死に至らしめるなどの観測例が多数報告されている。

 マイクロプラスチックは、魚や貝が餌とするプランクトンと混ざって海の中を漂っていることから、二枚貝、カニ、小魚などに問いこまれる。東京湾で採取した80%のカタクチイワシの消化管から1mm 前後の大きさのものが検出されている。東京の多摩川河口で採取した貝やカニやハゼからはさらに小さい数10㎛のマイクロプラスチックも検出された。これらのプラスチックは、それらの貝や魚を食べた大きな魚にも移行していく。

 マイクロプラスチックの生物への影響に関しては、生体異物であることから生物組織の炎症等の影響(粒子毒性)が実験的に明らかにされている。ただし、極めて微小な㎛規模のプラスチックは人間の体内に留まることなく、やがては排泄されてしまうと考えられるので、粒子毒性が人間に影響を及ぼしているかどうかは現在のところ不明である。

 現時点で問題であることが明らかになってきたことは、プラスチックに含まれる有害物質の生物への影響だ。

 海水中でマイクロプラスチックは有害な化学物質を高濃度に濃縮する性質がある。プラスチックにはその原材料の石油の骨格が残っている。この点から言うならば、プラスチックとは固体状の油と考えることができる。プラスチック自体に含まれる添加剤だけではなく、海中に存在する有害な化学物質の多くが油になじみやすい性質を持っているので、海の中でマイクロプラスチックは有害な化学物質を高濃度に濃縮する。

 マイクロプラスチックは、それ自体の有害な添加物と、海中から吸着してきた有害化学物質を、摂食した生物に運び込み、内部から体を攻撃する「トロイの木馬」のような役割を果たすということが判明してきた。実際、プラスチックを摂食した生物への添加剤の吸収と脂肪や肝臓等への蓄積は、海鳥、海浜生物、魚について、室内実験や野外の観測から明らかにされてきている。

 現時点では、マイクロプラスチックやそれらに含まれる化学物質によるとみられる野生生物の影響の検討例は多くは無い。オーストラリアでのアカアシミズナギドリという海鳥の調査では、プラスチックの摂食量が多い個体で血中のコレステロール濃度が高く、カルシウム濃度は低いことが観測されている。血液中Ca濃度が低下すると、卵の殻が薄くなり、孵化率の減少や個体数の減少を招くことが懸念される。

 農薬の DDT について『沈黙の春』でレイチェル・カーソンが書いたことが、プラスチックで起こっていることになる。また、血中コレステロール濃度が高いことは万病のもとである。形態上の異常は確認されていないが、血液検査で異常が出ているので、この海鳥についてはプラスチック摂食による化学物質の影響が顕在化する一歩手前の状況であると考えられる。同様のプラスチック由来の有害化学物質の蓄積や影響が他の海鳥や他の生物について起こっているかどうかは現在研究途上であるが、海鳥で起こっていることを「炭鉱のカナリア」による警鐘と受け止め、予防的な対策をとっていくべきである。

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