« 生物多様性とは何か、なぜ重要? ⑤ | トップページ | 生物多様性とは何か、なぜ重要? ⑦ »

2021年3月18日 (木)

生物多様性とは何か、なぜ重要? ⑥

続き:

究極の侵略者――新興感染症ウィルス

 人間による過度の生態系破壊と経済のグローバル化は、新興感染症という新たな病原体ウィルスのリスクをも生み出した。もともと病原体ウィルスは、人間が地球上に誕生するよりも遥かに古い時代より、様々な動物たちと地域固有の生態系の中で共進化を繰り返し、自然宿主とされる動物種の体内で共生もしくは共存関係を構築していたとされる。

 人間が化石資源を採掘してエネルギー利用するようになって以来、人間活動が肥大化し、自然環境の奥深く迄その活動圏が侵食したことで、野生動物体内のウィルスと人間あるいは家畜動物との接触機会が増大して、新興感染症が頻発するようになった。実際に1970年代以降に人間社会において急速に感染が拡大したSARSウィルスや、エボラ出血熱ウィルス、AIDSの原因となるHIVウィルスは、それぞれキクガシラコウモリ、ウマヅラコウモリ、およびサル類に寄生していた野生のウィルスが起源とされる。

 そして、2020年、新興感染症の最新ウィルスとして新型コロナウィルスが全世界にパンデミックを引き起こし、今なお、世界各国に重大な健康被害と経済被害をもたらし続けている。このウィルスの起源については、今も調査が続けられているところだが、最新のDNAデータに基づけば、コウモリ由来のコロナウィルスがヒト型に変異し、人間社会に感染拡大したと推測されている。

 特に、新型コロナウィルスは、その感染力の強さに加えて、グローバル経済が作り出した人の高速大移動に乗じて、僅か数か月で南極大陸を除く、全大陸に感染が拡大した。これだけ急速に世界制覇を果たした感染症は人類史上データがない。

新型コロナは自然の摂理

 人間社会においては排除すべき存在とされる病原性ウィルスも、自然界においては生物多様性の一員として重要な生態系機能を果たしている。それは、動物集団が増え過ぎて密になり、生態系のバランスを崩し始めた時に、その集団に感染症をもたらして数を減らすとともに、さらに抵抗性をもつ、より強い集団へと進化させる「天敵」としての役割である。いわば、足の遅いシマウマから食べることでその個体数を調整し、より足の速いし集団へと進化させ続けているライオンと同じ役割をしているのである。つまり、病原性ウィルスは自然生態系のバランスを維持するうえで不可欠の存在と言える。

 今、人間は 77億人という巨大バイオマスで生態系のトップに立ち、地球上の資源を過剰に消費し、環境を悪化させることで生態系のバランスを崩す存在となっている。これだけ過剰に密集した動物集団は、まさに病原性ウィルスたちから見れば格好の獲物と言っていい。生態系のレジリエンス(回復力)機能として新興感染症が人間社会を襲ってくる現象は、起こるべくして起こった自然の摂理と言えるのだ。

« 生物多様性とは何か、なぜ重要? ⑤ | トップページ | 生物多様性とは何か、なぜ重要? ⑦ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事