生物多様性とは何か、なぜ重要? ⑤
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グローバル経済がもたらす侵略的外来生物の増加
経済のグローバル化が推し進められることで、人とモノの国際的移動が活発となり、それにともなって外来生物も増加し、深刻な生態系への影響や社会的リスクをもたらしている。
輸入大国である日本でもペットや食用目的で輸入された外来生物が野生化してその分布を拡大して問題となっている。例えば1925年に食用目的で輸入されたオオクチバスという淡水性肉食魚は、ほとんど食べられることなく、加えて、ルアーフィッシングという娯楽目的で日本各地の内水面に放流された結果、その個体数が増加し、日本固有の在来魚類を捕食する被害が指摘されている。
アニメーション番組の影響で 1970年代に北米からペット用に輸入されたアライグマは、捨てられた個体が増殖して、今や日本全国に分布を拡大し、生態系に悪影響を及ぼすのみならず、甚大な農作物被害をもたらしている。
近年では輸入コンテナに紛れて南米原産のヒアリが日本全国の国際港湾に上陸・侵入していることが報告され大きな話題となった。2019年に東京港と横浜港で、そして2020年は名古屋港で、大規模な野生の巣が発見されており、今後、日本国内での分布の拡大とそれに伴う生態系被害・経済被害が懸念されるのだ。
こうした外来生物による被害は日本に限らず、全世界で進行しており、日本の生物も海外に持ち込まれることで有害な外来生物と化すケースが多数報告されている。例えば日本の雑草であるクズは、米国に緑化目的で持ち込まれたものが猛烈な勢いで分布を広げており、現地ではグリーン・モンスターと恐れられている。
元来、生物は本来の生息域の固有の生態系の中で様々な多種生物と共に進化しており、その生息数は生態系のバランスが維持されるよう天敵による捕食などのリミッターが働くようになっている。しかし、人間が生物を本来の生態系から他の生態系に移動させることで、進化というプロセスを経ていない種どうしが出会い、生態系のバランスが崩れて、新しく導入された生物の増殖に歯止めが効かなくなり、侵略的外来生物が生み出されることとなる。
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