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2021年3月22日 (月)

生物多様性とは何か、なぜ重要? ⑩

続き:

新たなる自然共生型社会への展望

 ウィルスを含む生物多様性との共生をはかるために、今後、我々はどのような社会を目指し、そしてどんな生活スタイルへと変容すればいいのか?

 まず、喫緊の課題として、これ以上の生物多様性を劣化させる活動を縮小し、人間社会と生物界が過剰に干渉しあわないよう、両者の間のゾーニングを確立する必要がある。ウィルスの本来の生息地である自然生態系に対しては、我々はもうこれ以上の過剰な関係および搾取はやめなければならない。

 我々の生息エリアと野生生物の生息エリアの双方を保全し、不可侵の共生関係を築くことが、これからの安心・安全な人間社会の持続的な発展には欠かせない。

 また、適正な資源消費に応じた社会を作るためには、現在のような海外資源や市場に依存したグローバル社会および都市部集中型社会からの脱却が求められる。すなわち、国ごと、地方ごとに分散した自律的・循環型社会を構築しなくてはならない。グローバル化した世界で、新型コロナは簡単にパンデミックを引き起こし、首都圏に経済と人口が集中した社会で、新型コロナは簡単に国の経済を麻痺させた。この数か月の世界的危機を見ても、今の世界画一型・都市一極集中型の国際社会が、いかに環境変化に脆いかがわかる。

 生物の世界でも、地域ごとの環境に適応した集団が分化して生息し、集団同士が緩やかにつながって、適度な遺伝子流動や物質流動を保つ「メタ集団構造」のほうが、大きな一塊の集団よりも、環境変化に対するレジリエンスが強く、全体の持続性が保たれるとされる。人間社会においても、地域ごとにその環境や資源に応じた独自の経済社会を維持して、地域社会同士で適度な経済流動を維持することで、他の地域経済によって補完することが可能となる。国際社会においても国レベルで自律性と独自性が維持されれば、リーマンショックのような世界経済の一斉破綻というクライシスも回避されるであろう。

 地方分散・地域独自の経済社会において農林水産業という第一次産業をベースとした資源循環型システムが維持されれば、外部からの資源搾取は不要となり、国全体、ひては地球全体の自然資源の持続的維持が可能となる。そして、日本こそがかってそうした社会を体現した国でもある。

 我々日本人は縄文時代から、里山生活に代表される自然共生社会を維持し、実に江戸末期の開国に至るまでの 1万年近い年月をこの島国の中だけで生き続けてきた。かっての日本社会が育んできた持続性のメカニズムを解明し、現代社会に適応させない手はない。

 近代社会では利便性と効率性を重視して都市に人口集中したが、ITやインフラが整った今では、地方で暮らすディスアドバンテージはどんどん縮小されてきている。地方に分散した人が地域ごとに経済を自立させ、お互いに緩やかにつながるネットワークを構築する。このシステムは国単位でも応用可能であろう。実際にこのコロナ禍のなか、多くの人がテレワークを体験し、時間と距離を問わず、全世界とつながる可能性を実感したはずである。

 もちろん、今の社会構造を一気に変えることは容易ではないが、残された時間はかなり限られていると考え、理想ではなく、具体的な行動に移す必要がある。資源搾取型グローバリゼーションから脱却し、新しい地方分散型社会へと移行するための行動変容として、まずは個人レベルで始められることで、そして始めるべき第一歩は「地産地消」であろう。地方で生産されたものを地方で循環することで、地域固有の経済・社会・文化が育まれ、自立経済のもとで地域間・国家間の連携へとつなげていく。地球上のあらゆる生物との共生が可能な、持続性の高い社会を実現する道は、個人の一歩から始まる。

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