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2021年4月30日 (金)

中国デジタル革命と監視社会の行方 ④

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■ 百花繚乱の中国イノベーション事情

 「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる深圳市では、すでに公共交通機関はすべて電気自動車(EV)だ。自家用車の EV 転換も進んでおり、近い将来、深圳市からガソリンエンジン自動車が姿を消す日も遠くないだろう。

 とくに中国版軽自動車の「K-Car」が今、農村部を中心に市場を拡大している。中堅自動車メーカー「上汽通用五菱汽車」が2020年7月に発売した「宏光MINI EV」は1台約45万円と、自宅周辺で使う軽自動車としてはて手ごろ。EVの普及を加速すると期待されている。

 一方今年1月、「NIO(上海蔚来汽車)」が発表した「EVT7」は世界の自動車産業に衝撃を与えた。高性能センシングユニット、第二世代コックピット、自動車運転機能は勿論のこと、世界で初めて全固体リチュウムイオン電池を搭載した。固体電池は液漏れせず安全性が高いこと、エネルギー密度が高く航続距離をのばせること、高速充電が可能なことから、世界で熾烈な研究開発が繰り広げられてきた。「ET7」の航続距離は 1000 km を超える。

 自動運転分野では検索エンジンの「百度」が米国カリフォルニア州の「2019自動運転解除レポート」でグーグルの「ウェイモ」を抑えてトップとなった。すでに北京市、湖南省長沙市、河北省ソウ州市で自動運転タクシーやバスの試験運行サービスを開始した。ガソリンエンジンからの脱却は、世界の産業構造を大きく変えるだろう。

 モバイル通信網 5G の構築でも中国は一歩先を行く。基地局の設置は 2020年11月現在すでに71万8000局に達した。5Gの特徴は「超高速大容量」「超低遅延」「超多数接続」である。中国政府は優先的に5Gを活用する分野として「スマート医療」「スマート教育」「超高精細放送」「スマート港湾」「インターネット+製造」「スマートグリッド」「自動運転」の7分野をあげており、産業や医療分野での実用化が進む。5G通信網の整備は「第四次産業革命」の重要インフラとなる。

 医療分野でのイノベーションもすさまじい。AIを使ったCT画像診断は医師による肺炎の診断に不可欠となった。ベテラン医師が30分以上必要としていたCT画像分析を、AIは僅か20秒程度に短縮した。アリババ傘下の「達磨院(DAMOアカデミー)」、AIベンチャーの「インファービジョン(北京推想科技)」、「センスタイム(商湯科技)」、「メグビー(廣視科技)」、「YITU(依図)」などが参入、すでに日本の医療ベンチャーとの連携も始まっている。

 医療ロボットも多種多様な機種が開発された。1分間に200人の体温測定が可能なAI検温ロボット、PCR検査ロボット、消毒ロボット、配膳ロボット、患者搬送ロボットなど続々と登場した。

 さらに脳にAIチップを埋め込んで睡眠や記憶力を制御するBMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)技術や、クローン技術でペットや希少動物を再生させるベンチャーなどが巨額の資金を集めてビジネスを開始した。中国のイノベーションは果たしてどこまで進むのか、そのバイタリティに驚かされるとともに、人知を超えた領域に踏み込む大胆さに、倉澤(筆者)は不安を抑えることができない。

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