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2021年4月 8日 (木)

香害―――新たな空気公害 ⑨

続き:

□ 日本の見当違いの安全性確認

 香害被害者の増加を受けて、国民生活センターは2020年に柔軟剤の試験を行なった。だがその結果は、被害者の期待に応えるものではなかった。香りの強いタイプの柔軟剤の製品に示されている規定量以上(2倍)を使用した場合には、放出される TVOCs(総揮発性有機化合物)が増加したなどの報告であった。それは、健康被害がし生じたのは、あたかも消費者が使用量を守らなかった結果だとするもので、柔軟剤の有害性にはまったく触れずに試験は終了した。

 また、製品から揮発する有機物質を測定する機器はすでに揃っており、科学的根拠は十分に可能であるにもかかわらず、臭気判定士という特定の個人の鼻で、強い香りと微香の柔軟剤から揮発する有害物質の危険性に、注目すらしていない。

 一方、自治体の対応は進んでいる。健康被害の増加を受けて、香料自粛を求めるポスター掲示や、自治体のウェブサイトにそれらの情報を掲載する動きが活発化している。地方議会の議事録を調査した「CS:憩いの仲間」(青山和子代表)によれば、2020年6月時点で全国の47都道府県のうち21の議会で香害の問題が取り上げられた。また、7市民団体からなる「香害をなくす連絡会」の活動は活発で、厚労省、文科省など6省庁に要望書を提出し、意見交換を行なっている。また、香りつき製品の三大メーカーである花王、ライオン、P&Gジャパンに対して、質問書を提出して面会を求めているが実現なし。

□ 求められるマイクロカプセル使用禁止

 目下、市民団体が行政に要求していることは以下のこと。家庭用品品質表示法においては、洗濯用・台所石けんなどは対象となっているが、芳香・消臭剤、抗菌・除菌剤、柔軟剤などは対象となってないので、これらの製品を指定品目にすること。柔軟剤やルームフレグランスなどから揮発するVOCs の測定を行ない、吸入毒性試験すること。さらに、柔軟剤など家庭用品へのプラスチック製のマイクロカプセル類の使用禁止などである。

 欧州化学品庁(ECHA)は、2019年のマイクロプラスチック提言において、マイクロビーズだけでなくマイクロカプセルの使用中止を提言した。家庭用品に含まれるマイクロカプセルは、プラスチックによる環境汚染を進めるだけでなく、人体も汚染するからである。

□ 「香害」は石油文明を象徴する公害

 20c.はまさに石油の世紀といわれるほど、現代文明は石油に依存してきた。原油からナフサを分離し、それらを元にプラスチック原料や人工化学物質などを作る。合成香料も同様に石油や天然物から抽出した成分を元に、多様な化学工程をへて作られる。香害は、そうして作られた合成香料、それを包むプラスチック製マイクロカプセル、界面活性剤、添加物など、数多くの人工化学物質がもたらした21c.型の空気公害だ。

 天然のバラの香りを真似て、人工的なバラの香りを合成するために、数十から100種類もの化学物質をブレンドする。そうしてできた香りを、あたかも天然と同じ香りだとしてメーカーは家庭用品に添加している。そして消費者も、それに騙され、”香りブーム”に翻弄されている。我々の生活空間には、天然のような人工的な香りが充満しているのである。

 それに対して今日、我々の中でとくに感度が高い一群の女性たちが、「炭鉱のカナリヤ」のように、”NO”と声を上げている。嗅覚は、動物にとって外敵から身を守るための要だ。彼女たちは人工的な香りの溢れる空気が、自分たちの健康にとって脅威となる生体異物であることに、誰よりも早く気づき、警鐘を鳴らしているのだ。

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