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2021年4月 2日 (金)

香害―――新たな空気公害 ③

続き:

□ 好みの問題でなく、製品による被害

 「香害」でとくに問題となるのは、ニオイに対する個々人の感性が異なるため、周囲の理解を得ることが難しい点である。特定の製品のニオイで体調不良を起こしたと訴えても、香りは「好みの問題」、「感覚の違い」、「遺伝子の問題」「過敏な人だから」などの理由で相手にされないことが多い。

 2020/05/09、の朝日新聞は「ブームの柔軟剤、漂う匂いは『香害?』」とする記事を掲載。東海大先進生命科学研究所の平山令明所長はそこで、「柔軟剤を嫌だと思うのは遺伝子が決めた体質による」と述べている。香りの感じ方は個々人で違うのは、遺伝子のせいであり、製品の問題ではないとする見解である。

 しかし、すでに全国レベルで少なくとも数千人規模の被害者が出ている事実がある限り、もはや個々人の感性の問題として片づけるわけにはいかない。香害は、ひどくなると、化学物質過敏症(CS)を引き起こし、その元凶は製品から揮発する有害物質なのである。CS問題の第一人者である坂部貢教授(東海大医学部長)は、CSの特徴的所見は嗅覚過敏症であるとしているので、このまま香害被害者が増え続ければ、身近な生活空間にCS患者が溢れることになるだろう。

 そもそも「香り」や「におい」という言葉は、長い人類の歴史上、”甘い香り” ”良いにおい” ”香りによる癒し”など、好感度のイメージで使われることが多く、アロマの精油がもつ身体への効用はよく知られている。ところが、2000年頃からわが国では、メーカーが競って合成洗剤や柔軟剤などの生活用品に、人工的な香りを添加した新製品を売り出しはじめた。「香り」が商品の新付加価値になったのだ。そして2009年、輸入代理店など米国から強い香りの柔軟剤「ダウニー」を輸入し始めてから状況が一変した。その直後から、甘い香りに癒される人が増えるどころか、人工的なニオイで体調不良を訴える人が続出しはじめたのである。それでも企業は、甘い香りに潜む有害物質の危険性などないかのごとく、現在もテレビCMなどで香りつき製品の宣伝合戦を繰り広げている。

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