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2021年4月22日 (木)

Social Science 大人のう蝕リスクとその対処を考える ②

続き:

3. う蝕リスクは生涯にわたり変化する

 う蝕リスクについて、先ず、けんこうにほん21の人生の6段階ごとに示してみよう(後で)。ある段階で起きた行動変容は、次からの段階に反映。高年期における口腔健康も、幼年期の乳歯のう蝕予防からスタートするといって過言ではない。

!) 青年期

 この時期は、養育者や学校に管理されず、歯科健診からもれる危険な時期を含む。社会人として生活スタイルが一変し、う蝕リスクが一気に高くなることもある。この時期の若者は、一般的に口腔の健康増進をう蝕や歯周病など疾病の視点からでなく、美容やファッション、スポーツの点から受け入れることが多い。

🔶 高校生のう蝕発症とその要因に関する最近の報告

 澤田らは、高校生を対象にう蝕発症に関する2年間の前向き疫学調査を行った。自立を目前にした青年期を対象とした貴重な研究である。2020年に結果を報告しているが、う蝕と統計的に有意に関連した要因は、「DMF 歯数」、「フッ素入り歯磨剤の使用」、「糖質ゼロ等の表示製品を選ぶ」、「過去1年間にデンタルクリニックで歯の掃除を受けた」の4項目であったとのことである。ここでは、1年生時のう蝕有病者率は35.0%であったが、3年生時には57.5%に増加している。フッ化物含有の歯磨剤を使用している者のう蝕発症が、未使用者と比べ有意に低かったという結果に、フッ化物の威力を再認識させられた。

2)壮・中年期

 社会的使命が最も求められる時期である。口腔内に修復物や補綴物が多くなり、歯根露出が始まれば口腔内環境は一変する。また喫煙や飲酒、運動不足などの生活習慣が続けば歯周疾患のリスクも高くなる。この時期に良好な口腔環境を整備しておくことは、健康ではつらつとした高年期への導入として重要である。

3) 高年期

 加齢よる唾液分泌量の低下、根面の露出、義歯の使用などがう蝕リスクを高める。その一方、高齢者ではエナメル質や根面象牙質の石灰化度が高くなっているために、口腔環境を整えさえすれば、う蝕の進行は若年者に比べてはるかに緩慢となる。また、唾液量が少ないことは、一方で、口腔内でフッ化物イオン濃度が高いまま維持されることになるから、フッ化物の有用性を高めることにつながる。高齢者に特有の根面う蝕は、不用意に切削するとかえって歯の寿命を短くしてしまう。対処には、非侵襲(非切削)で、活動性のう蝕を非活動性にし、う蝕の重篤化を回避することが有利な場合が多い。

4) 認知症患者のう蝕治療

 認知症患者のう蝕治療をどうするか。これに指針を示したのが日本老年歯科医学会である。エビデンスが十分得られない中で、様々な医療状況を統合し臨床指針を示されたことに敬意を表します。十分な協力が得られない認知症患者のう蝕の修復治療においては、回転切削器具を用いずにスプーンエキスカベータ等の手用切削器具でう蝕をできるだけ除去し、グラスアイオノマーセメントで充填することが推奨されている。より安全で患者の身体的負担が少ない治療である。

 グラスアイオノマーセメントは、光硬化型ではない従来の粉末・液体タイプのものを使うことがポイントである。また、根面う蝕の進行抑制には、歯面清掃の後に38%フッ化ジアンミン銀製剤(後で)の塗布が有効とされている。

 

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