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2021年4月27日 (火)

中国デジタル革命と監視社会の行方 ①

倉澤治雄(科学ジャーナリスト)さんの小論を載せる 「世界 4」より コピーペー:

■ 「コピー大国」から「科学技術強国」へ

 近未来の人間社会に最も影響を与える技術はおそらく人工知能(AI)だろう。農業、工業、商業、金融、医療、軍事利用まで、あらゆる分野で社会実装が始まっている。AI分野での技術力評価を行なう米国の科学技術系シンクタンク「情報技術イノベーション財団(ITIF)」の最新レポートは、全体的に米国がリードしてはいるものの、「中国が差を詰めてきた」と危機感を露わにした。

 「誰が AI レースの勝者なのか」と題するこのレポートでは、「人材」「研究」「開発」「ハードウェア」「実装」「データ」の 6項目で AI 分野の米 140中比較を行っている。その結果、総合点では米国が 44.2 ポイントと中国の 32.3 ポイントを抑えてリードを維持したものの、「実装」と「データ」の2項目では中国がトップに立った。ヨーロッパは 23.5 ポイ ント、日本は評価の対象にさえ入っていない。科学技術振興機構研究開発戦略センターの福島俊一フェローは「AI関連論文の 8 割は米国および中国発で、日本は周回遅れです」と語る。

 米中対立の核心は「先端的基盤技術(Emerging & Foundational Technology)」をめぐる覇権争いだ。科学技術関連指標は中国の科学技術力が米国に肉薄していることを示している。2018年の研究開発費用(OECD購買力平価換算)は、米国の 58.2 兆円に対して中国が  55.4 兆円で、中国が米国を上回るのは確実だ。ついでに、日本は、17.7 兆円である。政府予算ベースではすでに2010年、中国が米国を抜いた。研究者数でも米国の約140万人に対し、中国は 200万人に迫る。

 研究成果の指標の一つ、学術論文数では2018年、中国が52.8万件で米国の42.2万件を抜いたほか、論文の質を示す「被引用度 1%の重要論文」でも、米国に次いで 2位につけた。さらに産業技術の指標のひとつ国際特許出願数では、2019年、中国が59120件と米国の57600件を抜いてトップに立った。

 科学技術分野での中国の加速度的発展は、2000年前後を起点としている。この20余年、米国が「テロとの戦い」に明け暮れる中、中国は「コピー大国」を脱し、科学史上例を見ないスピードで「科学技術強国」への変貌を続けているのである。

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