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2021年4月29日 (木)

中国デジタル革命と監視社会の行方 ③

続き:

■ デジタル技術で変容する中国社会

 中国社会に変化をもたらすもう一つの技術が顔認証。顔認証は生態認証技術の一つで、人間の顔の画像から特徴を抽出して人物を特定する。画質の向上と、AIによる「深層学習」の応用で精度が上がり、米国立標準技術研究所のベンチマークテストでトップとなった日本のNECのエラー率はわずか0.5、1000人に5人。2位は中国上海の「「YITUテクノロジー(依図網絡科技)」、3位はマイクロソフトだった。

 顔認証技術は「双子の判別」が難しいこと、人種によってエラー率が異なること、経年変化に弱いこと、それにマスク着用やなりすましの判別が難しいことなどの課題がある。他の生体認証と組み合わせる「マルチモーダル認証技術」の開発が進む。

 中国政府はいま、14億の全国民を 1秒で特定できる監視システムの構築を進めている。都市部を中心に配備される「天網(スカイネット)工程」と農村部で住民が共同で運用する「雪亮工程」である。とくに「天網」は約 6億台の監視カメラとスーパーコンピュータを駆使し、短時間に人物を特定するシステムだ。

 2017年12月、英国BBCの記者が貴州省公安当局と共同で性能実験を行なったところ、雑踏に紛れた記者を探し出すのにかかった時間はわずか7分だった。「天網」の名は「天網恢恢疎にして漏らさず」に由来し、犯罪を見逃さないという中国公安当局の強い意思を示している。

 監視カメラの存在は中国の人々の行動規範を大きく変えた。中国で人気の香港出身の歌手、張学友の中国ツアーでは、会場のゲートに監視カメラが設置され、逃亡中の多数の指名手配犯が逮捕され話題となった。監視カメラによって「社会が安全になった」と感じる人々の比率は高い。

 日常生活にも変化をもたらした。人々は横断歩道で信号を守るようになり、ごみのポイ捨てが大幅に減った。自動車の運転は穏やかになり、高速道路を猛スピードで跋扈していたタクシーは、速度制限を守るようになった。

 英国のIT関連調査会社「コンパリテック」が世界 50 都市の監視カメラの台数を人口 1000 人当たりに換算して比較する調査を行なったところ、トップ 10 のうち 9 都市が中国だった。1位は中国山西省の首府太原で約 120 台、 2位は江蘇省の無錫市で約 92 台、3位が英国ロンドンで約 68 台、東京は約 1 台で 70 位だ。

 また矢野経済研究所の「監視カメラ世界市場に関する調査2020」によると、世界の年間出荷台数約 6500 万台のうち、中国市場向けが約 6 割を占める。

 デジタル監視網構築に対する中国公安当局の強い強い決意なのだ。

 ――――――それがうかがえるのだ。

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