香害―――新たな空気公害 ⑦
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□ 対策が進む米国やカナダ
米国では国レベルの取り組みも進んでいる。環境保護庁(EPA)は20年以上前に、柔軟剤から揮発するニオイに有害物質が含まれている可能性を疑い、VOCs測定を行なっている。その時に検出された有害物質は、中枢神経系への影響もあるαーテルピネオール、発がん物質でもあるクロロホルムやベンジルアセテート、吐き気や頭痛、めまいを起こしやすいベンジルアルコールなどであった。
また、米国では 90年代より環境に良い製品を DfE (Design for the Environment) としてラベリングを行なっている。2015年、EPAはそれに代わり、洗濯洗剤などの家庭用品について、消費者がより安全な製品を選べるような認証制度 (Safer Choice Program) を作り、製品ラベリングを開始した。香りについても「フレグランス・フリー製品」がより安全な選択として認証されているが、それは香りつき製品のニオイに敏感な人やアレルギー反応を起こす人のための配慮とされており、健康弱者への対応だ。
また米国疾病予防管理センター(CDC)は2009年、CDC施設内における香りつき製品の使用を禁止し、一方5000人の職員に、香りつき洗剤や柔軟剤などで洗濯した衣類を身に着けて職場に来ることの自粛を要請した。それは、香料などの化学物質が、とくに敏感な職員だけでなく、多くの職員の健康に悪影響を与え、喘息やアレルギー、慢性頭痛などの原因になると考えられているからである。
さらにCDCは2015年、同ウェブサイトを改訂し「職場における空気環境をよい状態に保つことは、職員の健康と仕事の効率を維持するための予防的措置である」と明記した。米国では香りつき製品の人工的なニオイの有害性が、このようにはっきりと認識されているのだ。
この他にも、米国やカナダでは、いくつもの州で行政機関等の公共施設、学校、大学、病院などにおける「フレグランス・フリー・ポリシー」が実践されている。それらの施設では、積極的に香りつき製品の使用が自粛されている。また、学校におけるフレグランス・フリーの理由としては、人工的な香りが、子どもの学習能力に悪影響を与えることがあげられている。
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