実装される監視社会ツール ⑩
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市民の意識こそが問われている
住基ネット差止訴訟の2006年の大阪高裁判決は。「行政機関において、住民個々人の個人情報が住民票コードを付されて集積され、それがデータマッチングや名寄せ等により、住民個々人の多くのプライバシー情報が、本人の予期しない範囲で行政機関に保有され、利用される危険が相当ある」と判断した。
行政機関は、可能な限り個人の全体像を把握できるよう、個人情報を結合させたいという動機があると、住民基本台帳ネットワーク導入のための1999年の住民基本台帳法改正法案の審議の際、与党議員から説明がなされた。
「私(武藤)役人の端くれをしておりましたからわかるのですが、もうこのデータベースとこのデータベースを絶対ひっつけたい、のどから手が出るほど引っ付けたいと思う」。「最初から悪いことをしようなんて思っているわけじゃないのです。住民のサービスを向上するためには、この情報はひっつけた方がいい、データベースを作った方がいいというふうに絶対思うわけでありまして」(1999/04/20、衆議院地方行政委員会)
いまや、マイナンバーカードという公的な管理装置により、個人情報が堂々と収集利用されようとしている。2008年の住基ネット訴訟最高裁判決は、法律でしか住民票コードの利用範囲が拡大できないという法律上の制限や、監視の主体となり得る行政機関」になりはしないか。
特別定額給付金の支給をめぐる混乱から、行政上の必要の紐付けが2020年5月に検討され、見送られたことは記憶に新しい。私たち主権者であり続けられるのかどうかの、今まさに瀬戸際だ。
市民が、行政機関の欲求や動機を理解し、マイナンバーカードが「全市民の購入履歴、行動履歴の根こそぎ捕捉」につながらないよう、逆に行政機関を監視できるだろうか。
近代憲法がその前提とする「公権力に対する警戒心」と主権者としての誇りを持ち、自分のプライバシー権のみならず、次世代にせめて私たちと同程度の自由を継承し、国際社会において民主主義国家として敬意をもたれうる最低限度の「人権」や「法の支配」を保持するための不断の努力(憲法 12条)ができるのか、市民こそが問われている。
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