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2021年5月20日 (木)

実装される監視社会ツール ③

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強制顔検索をどう避けるか

 EUは、デジタル社会の進展に対応して、顔認証データの取り扱いに慎重な態度を示す。2018年5月に適用開始された GDPR (欧州一般データ保護規制)9条1項は、顔認証データを典型とする生体情報の原則収集禁止を掲げ、同 2項及び 3項の例外は、生命に関する利益を保護するために必要な場合やEU法または加盟国の内国法による定めが存在し、重要な公共の利益を理由とする取り扱いが必要な場合などに限られ、民間事業者の収集・利用には議会による法律制定が必要。

 今後は、プライバシー保護という民主主義国家にふさわしいブレーキを、EUと同じレベルで備えた国家かどうかが厳しく問われるようになる。

 民主主義国家では、「国民の幸福のため」に使われる行政権限であっても、その人権制限を最小限度にするため、主権者側の代表者で構成される議会で厳密に検討し、あらかじめ主権者に知らせた上で権力を行使する。法律がないまま行政が「便利な方法を見つけた」といって勝手に人権を制限することは許されない。法律に基づく行政というこの形式ルールを「法治国家」とよび、合憲な法律による行政の実質的ルールが「法の支配」だ。

 日本はG7を構成、「法の支配」「民主主義」「人権」を守る立場で権威主義国家と対峙することを国際的に表明。外向きのポーズだけでなく、国内でまずそれを実践して欲しい。

 日本弁護士連合会は、2012年時点ですでに、官民を通じて、どんな場合なら監視カメラで市民の顔情報を記録することが許されるか、許容される場合の運用条件も明記した法律を制定することによって、違法なプライバシー侵害を防止すべき提言をし、顔認証装置を適用するこたは許可しない(2012/01/19付「監視カメラに対する法的規制に関する意見書」)。その理由は、プライバシー侵害のみならず、デモや集会の参加者も対象となるなら、表現の自由、思想・良心の自由に対する萎縮効果まで懸念する。2016年9月には。警視庁による法律に基づかない顔認証装置の配布及び運用にも法制定を求める意見を出した。しかし、現在でも、顔認証システムが持つ高度なプライバシー侵害性に配慮した制限立法は無い。

 当初、暴力団犯罪・集団密航等の組織犯罪以外にはデータベースを使用しないと説明していた警察が、2018年12月の報道によると、同年10月に起こった渋谷ハロウィーン事件(現場共謀に基づく自動車損壊事件)では、単なる監視カメラ画像の組み合わせではなく、顔認証捜査を採用して犯人検挙に至ったとされる。法律のないまま警察が自分たちで守っていると主張しているにすぎないルールは、いつでも捜査側の必要に応じて緩められる危険がある。さらに2020年3月からは、全国の警察が犯行現場などの防犯カメラや、事件に関連する SNS などの顔画像を、顔認証データベースと照合する運用を始めており、捜査側のフリーハンドは拡張するばかりだ。

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