« 中国デジタル革命と監視社会の行方 ④ | トップページ | 中国デジタル革命と監視社会の行方 ⑥ »

2021年5月 1日 (土)

中国デジタル革命と監視社会の行方 ⑤

続き:

■  新疆ウィグル自治区で起きていること

 過って北京市北西部に「新疆村」があったことを知る人はもう少ない。ウィグル・レストランや民族色豊かな絨毯や独特の楽器を売る店が軒を連ね、路上は「羊肉串」を焼く肉と香辛料の香りに包まれていた。1997/03/10、北京駐在記者だった倉澤は、「新疆村」が取り壊されるとの情報を得て取材に向かった。現場に急行すると「村」はすでに跡形もなかった。

 「新疆村」取り壊しの理由は「羊肉串」を焼く煙の「環境問題」とされた。しかし真の理由は北京からウィグル人を追い出すためだった。直前の1997/02/25、ウィグル西部の町「イリ(伊寧)」で大規模な暴動が発生、人民解放軍の発砲により数百人が死亡、ウィグル人数千人が逮捕された。―「イリ事件」、あるいは「グルジャ事件」と呼ばれている。

 2003年12月、中国政府は「東トルキスtン・イスラム運動」、「東トルキスタン解放組織」、「世界ウィグル青年代表大会」、「東トルキスタン情報センター」の 4組織を「テロ組織」に認定。2001年の米国同時多発テロ事件以降、中国政府はイスラム教徒のウィグル族とアルカイーダなどイスラム過激派との連携に神経を尖らせている。

 しかしその後も暴動は続いた。2009年7月には首都ウルムチ南駅で爆弾事件が発生。一般市民にも多数の死傷者を出した。当時習近平主席がウルムチを訪問していたことから中国政府は大きな衝撃を受け、「懐柔策」から「弾圧」へと大きく政策を転換するきっかけとなった。事件翌日、習近平主席は「新疆の分裂と反分裂闘争の長期性、複雑性、先鋭性を深く認識し、対暴力テロ闘争を一刻も緩めず、果断な措置をとり、暴力テロ分子の気炎を断固として打ち砕かなければならない」との重要指示を発出した。

 シルクロードの要衝、新疆ウィグル自治区は異国情緒豊かな実に美しく魅力的な地域だ。首府ウルムチにはバザールが点在し、観光地として人気のあるトルファンには火焔山、ベゼクリク千仏洞、アスターナ古墳群、蒲萄溝などの見所がある。陽が落ちるとあちこちで夜市が開かれ、饅頭や羊肉を焼く香辛料の香りに包まれる。エイティガール・モスクや緑のタイルが美しいアパク・ホッジャの墓があるカシュガルは宝石のような街だ。酷暑の夏、砂漠からの熱風に煽られながら、旧市街の露店で長い時間をかけて飲んだ「八宝茶」の味は忘れられない。

 日本に住むウィグル人は「もう古き良きカシュガルはありません」と語る。耐震性の不備を理由に、旧市街はすべて取り壊されれたのだという。

 

« 中国デジタル革命と監視社会の行方 ④ | トップページ | 中国デジタル革命と監視社会の行方 ⑥ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事