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2021年5月12日 (水)

Science 可視光線励起蛍光法の――歯科応用 ①

長谷川篤司(昭和大学歯学部歯科保存学講座総合診療歯科学部門教授)さんの研究論文を記載。 コピーペー:

はじめに

 生涯にわたって歯の健康を維持するためには、う蝕発生に寄与する口腔内環境のリスクを軽減するとともに、口腔内の現症を正確に診断して適切なタイミングで必要な治療介入を決断することが重要だ。これまでう蝕への治療介入は主に視診のみによって診断・管理されてきた、それが継続的な予防管理を行うためには、(ベイズの定理なども考慮して)複数の診察や検査による診断確率の向上を検討すべきである。特に客観的検査機器による定量・定性検査の導入が必須であろうと考えていたところに、波長約 405nm の青色励起光線によってう蝕の進行度を定量的に判定する VISTACAM-P (Durr Dental) に出合った。その後、筆者(長谷川)はこの青色励起光を歯科、特に保存系治療の様々な場面への応用を検討してきたので、本稿にて報告する。

1. 青色励起光によって歯質から誘発される励起蛍光の特性の基礎的検討

 まずは、波長 400nm 付近の励起光が健全歯質やう蝕罹患歯質にどのような現象を起こしているかを光学的に検討することから始めた。

1)励起蛍光の光学特性を評価するために

 光学的な事象を客観的に評価する一助として、これまで多くの研究で活躍してくれた当科の試作顕微鏡蛍光測定システムを紹介する。常設光源としては波長 406nm、出力 36mW の半導体レーザーを採用、直径 1mm の投光ファイバーで顕微鏡ユニットに導光する。次に顕微鏡ユニット部ではこの光線を試験片に投光し、誘発された励起蛍光を集光して受光ファイバーで分光分析器 (MCPD7000、大塚電子)に導光し、励起蛍光の分光スペクトルとして分析する。

 顕微鏡ユニット部分はスチール製暗箱 (W50cm×H70cm×D40cm) 内に設置、周囲の光線を遮断した状態で計測が可能である。

2) 励起光波長を約 405nmとした根拠

(1)健全象牙質からの励起蛍光の分光特性と蛍光出力

  抜去大臼歯の隣接面を歯軸と並行に削除して露出させた健全象牙質平面に、フィルターによって出力波長を360~440nm に調整したハロゲン光源からの励起光を照射した場合の励起蛍光の分光スペクトルがある。

  分析された分光特性には単位がないので、照射した光源の出力を 1とした相対強度と表す。健全象牙質から励起蛍光を分光分析すると、分光スペクトルのピークは照射した波長の約 80nm 上に見られた。また、励起光の出力が同じ場合には、波長約 400nm の励起光で最も強い蛍光を出力することが分かった。

 (2)  う蝕象牙質からの励起蛍光の分光特性と蛍光出力

  次に同様の条件でう蝕象牙質に励起光を照射した場合の励起蛍光の分光スペクトルを出す。

  360~420nmの励起光によって発現する励起蛍光は約620nm、682nm 付近の 2つの波長にピークを持つ分光スペクトルを示し、肉眼的には赤色に見えていた。一方、440nm の励起光によって発現する励起蛍光の分光スペクトルはこれら 2つの波長にピークせず、肉眼的にも赤くは無い。

 以上の検討から、肉眼的に青緑色に蛍光する健全象牙質と、赤く蛍光するう蝕象牙質とを明瞭に識別するためには波長 380~420nm 付近が良いのだが、励起光の照射出力に対する励起蛍光の出力の点から波長 400nm 付近の青色励起光が最適であると考えられた。

 (3)  部位によるう蝕象牙質の励起蛍光の分光特性の連続的な変化

  う蝕抜去歯の断面を波長 405nm の励起光を照出する VISTACAM-P で観察した像がある。(1)に示した健全象牙質部はピーク波長約 480nm の明るい青緑の蛍光を示すが、硬化象牙質部ではピーク波長約 520nm の暗い緑色を示す。一方、う蝕の最深部や軟化象牙質部では赤色の蛍光を示していた。

 これらの分光スペクトルが示されているが、う蝕の進行している励起蛍光では 620nm と 682nm の 2つの波長で明瞭なピークが確認できる。

 

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