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2021年5月19日 (水)

実装される監視社会ツール ②

続き:

2 顔検索時代――顔認証データの強制取得

 マイナンバーカードは、申請者から提出された顔写真(または顔画像データ)からソフトウェアを用いて生成される顔認証データ(目・耳・鼻などの位置関係等を数値化して特徴を捉えたデータ。たとえれば、「顔指紋」、あるいは「三次元バーコード顔バージョン」のようなもの)と受け取りに来た本人の顔認証装置でチェックし、一致していることを確認したうえで交付されている。つまりマイナンバーカードの IC チップには、ただの顔写真ではなく、ソフトを使用するといつでも正確な本人確認が可能だと自治体が品質保証したデジタルデータとしての顔画像データが埋められており、市民にそれを拒絶する自由はない(住民基本台帳カードでは、顔画像の貼付と登載はいずれも拒否する選択肢があった)。

 2017年に発売されたスマートフォン「iPhone X」では顔認証による本人確認制度が採用され、その認証の正確さは、指紋認証の 1000 倍とされている。

 顔認証システムは、日本では 2002 年、日韓共催サッカーワールドカップの際にフーリガン(サッカー観戦時に騒動を起こす者)の入国を阻止する目的で、関西空港と成田空港の税関に設置、運用されたのが始まりである。その後、民間でも、テーマパークの年間パスポート取得者が、あらかじめ自分の顔認証データを登録することにより、入口のカメラに顔を向けるだけで、AIが「年間パスポート有資格者の顔認証データベース」を瞬時に照合し、文字通り「顔パス」で入場することができるサービスとして利用された。

 2014年度、警察庁は、法律を定めることなく、5 つの都県警察に顔認証システムを配備、これを用いた捜査を開始した。そのアウトラインは以下の通りである。

① あらかじめ、組織犯罪の前科者等の顔認証データを登録したデータベースを作成しておく。

② 犯行現場及び周辺から、監視カメラの画像を収集する。

③ 顔認証システムを使用することによって、②の画像の中から人の顔の部分を抽出して顔認証データを作り、これと①とを照合することによって、犯罪日時に近接した犯行現場及び周辺に、組織犯罪の前科者等に似た人物がいたか否かを瞬時に探し出す。

 警察庁の入札用の使用説明書によると、その性能は「10人以上の顔を同時に検知」「サングラスやマスク姿、正面でない場合も検知」「被写体の動きを追跡」「10万件のデータベースを 1 秒以内に照合できる」等とある。警察は組織犯罪にしか使用しないと説明するが?限定する法律がない。強制処分法定主義(刑事訴訟法 197 条 1 項但し書き)に則り、事前にデータベースへの登載対象を「重大組織犯罪の前科者等」に限定するなど、使用条件を法律で規制した上で事前明示しない限り実施されるべきでない。

 2016年頃から、顔認証システムは、民間で、例、コンサートチケットの高額転売を防ぐために、チケット購入者にあらかじめデータ送信させて作成した顔認証データベースと実際の来場者の顔とを会場入り口で照合、書店等が店舗で作った万引き犯データベースと来場者の顔を照合するなどの方法で活用されている。スマホの認証やテーマパークの入場など、自分の利便性のために顔認証データの利用に同意する場合は問題がない(ただし同意しない人は一切サービスを利用できない仕組みの場合、指紋の強制提出要求が許されるかという全く同じ問題が生まれることとなり、必要性・相当性を満たさない限り、民法709条の不法行為が成立するのではないかとの疑問はある)。しかし、強制的に取得させられるマイナンバーカードの作成に際して、顔認証データの収集・利用を拒むことができのない点は問題がある。

 日本には、出荷台数からの推計で500万台以上の監視カメラが設置されている。そこで記録される画像データの解像度が一定程度以上あれば、顔認証による検索が可能である。そしt、指紋の 1000倍正確さ顔認証データが取得されると、記録媒体に保存されている画像から本人を抽出して、その行動履歴を網羅的に把握することが可能となる。勿論、将来にわたる追跡も可能だ。インターネット上でには無数の顔画像データが存在する。技術的にはすでにインターネット上での顔画像検索も可能である。

 中国では監視カメラが 1億 7000万台以上設置、顔認証システムで個人を特定しており、例、赤信号を無視して横断歩道を渡ると個人が特定され、罰金を科される。中国のATMでは顔認証で出金でき、カードも暗証番号入力不要とされる。反体制派とみられる人物がこうしt逮捕されることもある。中国のこのシステムは「天網」と呼ぶ、照合可能な人数は毎秒 30億回とされる。日本でこのようなネットワークシステムを構築することはプライバシー侵害になり許されないはずだが、マイナンバーカードの強制は、制限立法も存在しないまま、実質的にこのようなシステムが稼働する危険があることを意味する。

 

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