Science 可視光線励起蛍光法の――歯科応用 ③
続き:
2. 青色励起光の臨床応用
1) う蝕治療への応用
(1) う蝕歯質認識・除去システムの試作と精度
VISTACAM-P を見てまず思ったのは、「検査だけではもったいない」であり、「う蝕象牙質を赤く蛍光させながらその部位を選択的に削除できないか」と考えた。そこで、文科省科学研究費の補助を得て、3種のう蝕歯質認識・除去システムを試作した。
A:LD光源ー超音波発振器う蝕象牙質認識除去システム(LD-US)
LASER Diode 光源から照出される波長 405nm 最大出力 90mW のレーザー光をハンドピース内部グラスファイバーで導光して術野に供給できるように設計、試作した。ハンドピースは歯科用多目的超音波治療器 ENAC(OSADA 社)を流用する、試作ダイヤモンドポイントによって感染歯質を削除できる。
B: LED 光源ー超音波発振器う蝕象牙質認識除去システム (LED-US)
高輝度の青色 LED(波長 405nm) をハンドピース先端部に装備して、ENAC を流用して設計、試作した。試作ダイヤモンドポイントは LD-US と共用。
C: LD光源ーマイクロエンジンう蝕象牙質認識除去システム (LD-ME)
LASER Diode 光源から照出される波長 405nm 最大出力 90mW のレーザー光線をマイクロエンジンハンドピース内部グラスファイバーで導光して術野に供給できるように設計、試作した。ハンドピースには市販コントラアングルを使用して、5 倍速ハンドピースを使用することも可能。
これらのう蝕認識と除去能力の評価には、顎模型にセットしたう蝕抜去歯を用いた。まず、保護用ゴーグルを装着した術者が 3種試作システム (LD-US、LED-US、LD-ME) のいずれかを用いて青色励起光で術野を照射しながら肉眼で赤い励起蛍光を発していると認識できた歯質を何度かにに分けて丁寧に削除した。次に青色のカリエスチェック(ニシカ)(CC)で術野を染色して、水洗後に評価した。う蝕部位全範囲が青色に染色された場合にはクラス1)と判定。術野に青く染色しない範囲があった場合には赤色のカリエスディテクター(クラレ)(CD)で術野を染色し、水洗後に評価基準に従ってクラスⅡ~Ⅴに評価。また、対照群として染色液の CC と CDで不染色になるまでう蝕象牙質を削除した CC群と CD群を加えた( CC-US と CD-US は超音波振動機使用、CC-ME はマイクロエンジン使用)。
LD、LED 群はクラスⅢが多く、CC、CD 群はクラスⅣ、Ⅴが多いことから、レーザーやLED によって赤く視認できるう蝕象牙質の深さは、カリエスチェックによって染め出されるより浅いと考えられた。また、超音波振動機+試作ダイヤモンドポイントは、回転切削器具+スチール球状バーよりも切削範囲のばらつきが小さいため、切削量が制御しやすいのではないかと考えられた。
罹患歯質を取り残すことは許されないので、これらの機器を臨床応用する前に、赤く蛍光せずに、青いカリエスチェックで染色し、歯質内に MS 菌数の残存がないかを慎重に検討する必要があると思われる。
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