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2021年5月 2日 (日)

中国デジタル革命と監視社会の行方 ⑥

続き:

■  究極の監視社会とデジタル技術

 新疆ウィグル自治区は習近平主席が提唱する現代版シルクロード「一帯一路」の重要な拠点だ。ウィグル族への苛烈な監視が始まったのは 2015年頃からと言われる。米政府系のラジオ・フリー・アジアは最大100万人が「再教育キャンプ」という名の強制収容所に送られたと報じた。また国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、中国が AI やビッグデータなどの最新技術を使って、ほぼすべてのウィグル族を監視していると告発した。

 これに対して中国政府は一貫して「施設は就職訓練所である」と主張、2021/01/11、には「再教育」や「職業訓練」が2019年10月に終了したと発表した。しかし2021/01/19、バイデン大統領就任の前日にポンペオ国務長官は、中国がウィグル族などイスラム教徒の少数民族に対して「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を犯したと認定、新任のブリンケン国務長官も 1月27日の就任後初会見で「ウィグル族に対してジェノサイドが行なわれたとの認証は変わっていない」と述べた。

 日本に住むウィグル人は「家族とは連絡を取りません」と語る。ウィグルでは国際電話をかけること自体が監視の対象となるという。ラジオ・フリー・アジアによると、スマホには監視アプリ「浄網衛生」はスマホ内のインストールが義務付けられている。「浄網衛生」はスマホ内の情報をスキャンして、映像、写真、通信履歴、閲覧履歴、SNS利用暦などをチェックし、問題があれば当局に通報する。

 顔認証カメラ付き監視カメラがフル稼働するほか、スマホの位置情報や測位衛星「北斗」を利用して、住民が一定距離以上、離れると当局に通報されるという。

 公安当局が熱心に収集しているのは住民の生体情報である。ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、中国政府は新疆ウィグル自治区だけでなく、ほぼ全国で DNA を含む生体情報を収集していると避難する。

 生体情報で個人を特定する AI 技術は格段の進歩を遂げた。古くから使われている指紋の他、顔認証、目の虹彩、声紋、掌紋、静脈などの認証技術がすでに実用化した。人の歩き方で認証する技術も開発が進む。「歩容認証」は歩行の周期や歩幅、骨の動き、荷物を持った時の癖などを分析して個人を特定する技術で、中国科学院自動化研究所傘下の AI 企業「銀河水滴科技」は 2019 年 7月、世界初の歩容認識システム「水滴慧眼」を開発したと発表。

 また DNA 情報は血縁関係の特定や、目、肌の色、髪の毛、顔立ちを予測するのに使われる。「DNA フェノタイプ」と呼ばれる技術で、2019年2月、ニューヨーク・タイムズはこの技術が新疆ウィグル自治区で使われていると報じた。

 個人に関するあらゆる情報を収集する中国政府のビッグデータ・プロジェクトは、「統合共同作戦プラットフォーム」と呼ばれている。新疆ウィグル自治区は最先端技術を使った監視技術の実験場となっている。

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