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2021年5月13日 (木)

Science 可視光線励起蛍光法の――歯科応用 ②

続き:

3)  蛍光部位はう蝕原因菌 S.mutans の存在と一致するか

 前項で波長約 400nm の青色励起光を歯に照射すると、健全象牙質部分は青緑色に、う蝕罹患象牙質は赤色に蛍光して肉眼的にも識別できる事象とその根拠(光学的特性)について説明した。

 しかしながら、これだけでは赤く蛍光する部位をう蝕として治療介入する対象として確定することはできない。現状、臨床的にう蝕の進行範囲識別に明らかな有効性を示している 2 種類のう蝕象牙質染色剤(カリエスディテクターとカリエスチェック)ですら、いずれも主たるう蝕原因菌である Streptococcus mutans(以降 SM 菌)などを染め出しているのではなく、脱灰や感染によって破壊された象牙質の微細構造に溶媒(プロピレングリコールとポリプロピレングリコール)の分子量の大きさに依存して色素が侵入しているに過ぎないからである。

 そこで、赤い蛍光によって検知、識別された象牙質部範囲へのSM 歯の侵入について検討した。う蝕抜去歯を厚さ 350μm に薄切りして免疫染色(ウサギ抗WapA ・ IgG を用いて SM 菌体表層タンパク質を黒く染色する)を施した試験片の光学顕微鏡を作る。

 基本的に青色励起光によって赤色の励起蛍光を発している象牙質内には SM 菌が存在すると考えて良いと思われる。しかしながら、蛍光している歯質の境界面では蛍光しないが微量の SM 菌が存在する部位がある可能性があることに十分注意して、さらに認識精度の向上を考えるべきである。このため、現在も継続的に、波長 620nm と 682nm の光線を選択的に認識しやすい光学フィルターの開発や、わずかな SM 菌と反応してその存在を強調できる色素やアクチベーターなどの開発を検討している。

 一方で、今回、顕微鏡蛍光システムではこの境界的な歯質からの 620nm 付近のわずかなピークを検知しており、このシステムのコンパクト化を検討することも興味深い。

 

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