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2021年6月27日 (日)

人間と科学 第325回 植物と薬と人間(3) ②

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 また、1つの細胞から分裂した次の細胞へ、あるいは個体から次世代の個体へ、正確な複製を繰り返して受け継ぐことも必要。

 こうした生命の属性を満たすために、動かない生き方を選択した植物は、物質代謝の点で私たち動物とは異なる生存戦略を発達させた。

 第1に、植物は、太陽からの光エネルギーを使い、空気中の二酸化炭素と土からの無機物によっ て、有機化合物(糖、脂質、アミノ酸などの一次代謝産物)を自ら生産する光合成機能を備えた。私たち動物は動けるため、捕獲や採集によってこれらの有機化合物を食料として取ることができるが、植物は食虫植物などのごく一部を除いて、光合成合成経路によって必要な有機化合物を自ら生産する。

 第2に、動けない植物は、外敵や環境ストレスなどから自らを守るために、化学構造が複雑で多様な成分を作る化学防御機能を発達させた。これらの化学成分は、外敵など他の生物に対して強毒となり植物自身の自らを守る。

 例えば、前回述べた、強い薬理活性を有するアルカロイドなどがその代表である。また、紫外線などの環境ストレスを緩和するフラボノイドなどの化学成分によっても身を守る。動物は、動くことに外敵やストレスから逃げることができるが、動いて逃げることができない植物は、いわば化学兵器によって対抗しているのである。

 第3に、植物は生殖のために花粉を運ばなければならないが、風に乗せて運ぶやり方は効率が悪い。そこで、より効率の良い受粉のために、昆虫に運んでもらう方法がある。そのため、植物の花は色や香りのついた化学成分を作り、昆虫を引き寄せて受粉を助けてもらうのだ。

   動かない選択をした植物の生存戦略

1. 光合成経路→エネルギーと物質の自立的生産

  太陽エネルギーを使って、空気中の二酸化炭素と土からの無機物によって有機化合物(一次代謝産物:糖、脂質、アミノ酸など)を自ら生産する。

  大きなバイオマス生産の元

2. 二次代謝経路 (1)→外敵やストレスからの防御

  化学構造が複雑で多様な成分を作り、この成分が外敵など他の生物に対して強い毒となって植物自身の自らを守る(アルカロイド)。紫外線等の

  環境ストレスを緩和する成分によって自らを守る(フラボノイド)。しかし、このような化学成分には薬になるものが多くある。

  「使い方次第で、毒は薬、薬は毒」

3. 二次代謝経路 (2)→生殖の効率化

  香りや色のついた化学成分を作り、昆虫を引き寄せて受粉を助ける(色素や香りの成分)。

    植物は人間に恵みを与えようとしているわけではない

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