« グローバル・コモンズの責任ある管理 ① | トップページ | グローバル・コモンズの責任ある管理 ③ »

2021年6月 5日 (土)

グローバル・コモンズの責任ある管理 ②

続き:

2 なぜ我々は人新世に踏み出してしまったのか?

 現生人類は約 20 万年前に誕生し、繰り返す氷河期をかろうじて生き延びたが、現在の文明が発展したのは、12000年前から始まった関氷期(完新世)の間である。この間地球の平均気温は上下1 ℃の変動幅の中で極めて安定した。この奇跡的に穏やかな地球環境の下で、人類は農耕文明を発展させ、都市を作って分業し、技術や制度を発展させた。文明は完新世の賜物であった。

 しかしこの経済発展のパターンは、地球の安定的でレジリエントな機能を損ない始めた。主要なエネルギー源となった化石燃料の使用によって、大気中の CO濃度は 280ppm から 410ppm に、世界の平均気温は産業革命以前に比べ 1.2 ℃も上昇。増え続ける人口を賄うための食料生産は温室効果ガス(GHG) の 35 %を排出する一方、熱帯雨林の農地転換を引き起し、生物多様性喪失の主因子となっている。

 増加する人口は都市に集中し、すでに世界人口の50%以上が都市に住む。その都市は GHG の 70%超える量を排出している。さらにアジアとアフリカで都市の形成と人口集中が進んでいく。そして Take-make-waste と言われる直線的な経済モデルが、資源・エネルギーの濫用をもたらしている。こうした現在の経済の在り方が、地球システムの容量を超えて、安定的な地球システムを毀損している。

 地球システムはこれまで、人間の活動からくる負荷をよく吸収し、定常状態にとどまろうとしてきたが、ある臨界点(tipping point) を超えると変化が連鎖し、急激に別の状態へと不可逆的な移行を始めると考えられる。

 現在、安定とレジリエンスのために重要な 15 の生物群系や生態系のうち、すでに 9 つで臨界点を超えつつある。科学者は、これが連鎖を引き起こし、灼熱地獄に転落する危険に警鐘を鳴らしている。

 我々が、完新世に近い状態の地球システムを保ちつつ、持続的可能に発展するためのガードレールを示そうとした地球システム科学者たちがいる。ヨハン・ロックストロームらは、2009年にプランネタリー・バウンダリー(地球の限界)の枠組みを打ち出し、地球を安定的でレジリエントなものにした 9 つのサブ・システムを特定した。そして我々が今どのくらい危険な状態にあるかを計測した。結果は 9 つのサブ・システムのうちすでに 4 つで臨界点を超えているか超えようとしているというものであった。

 こうした科学的知見は、我々の経済の在り方が、地球システムに負荷をかけ、その容量を超えて地球システムの重要な機能を変化させていること、そして我々が安定的な地球システムを失う危機に近づいていることを示している。人新世では、地球システムと人間の経済システムが衝突している。その根本的な解決は、我々が経済システムを変えることである。

« グローバル・コモンズの責任ある管理 ① | トップページ | グローバル・コモンズの責任ある管理 ③ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事