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2021年6月 6日 (日)

グローバル・コモンズの責任ある管理 ③

続き:

3 グローバル・コモンズの責任ある管理

 人新世に踏み出してしまった我々が、灼熱地獄に至ることなく、プラネタリー・バウンダリーの枠内で、持続可能な発展を遂げるために、何をすべきか。

  ここではひとつの概念、「グローバル・コモンズの責任ある管理(Stwarding Global Commons)」を提唱。人類の文明を支えてきた「安定的でレジリエントな地球システム」は、人類の共有資産である「グローバル・コモンズ」であり、人類が協調して責任を持って管理し次世代に引き継ぐべきもの(スチュワードするもの)だ。

 コモンズとはもともと、あるコミュニティが共有し皆で利用する(誰かの所有に属さない)牧草地、水源、森林や漁場などをいう。ここでコミュニティの構成員が、個人としては「合理的」に動き、自分の利益だけを追求してコモンズを利用しようとすると、共有資産は取りつくされ共有地は荒れ果てて、結果的には皆が損をする。「コモンズの悲劇」といわれる事態だ。しかし興味深いことに、多くのコミュニティは、コモンズを守るための何らかの取り決めを編み出し、構成員がそれを守る仕組みを創ってきた。そのルールは明文化され、あるいは慣行として守られてきたが、要は構成員がルールを知り、それを守ることの重要性、守らなければ結局は自分が損をすると理解していることである。コミュニティは構成員が誰かを知っているし、ルールを破ったときのペナルティも理解している。コモンズを守り、自分たちの子ども世代へ引き継ぐことの大切さも理解している。この結果、多くのローカルなコミュニティで、コモンズは守られてきたのだ。

 我々が直面している問題は、コモンズがローカルからグローバルになったとき、たとえば村の入会地から、はるかに離れたところにあるアマゾンやスマトラの熱帯雨林になったときに、この新たなコモンズを守る仕組みを持っていないということである。アマゾンやスマトラは遠く、それを失うことが自分の日常にどのような影響があるかを実感することは難しい。自分の食生活(パームオイルやコーヒー)や住生活(木材)がどれだけ熱帯雨林の乱伐採の上に成り立っているかに我々は無関心であるし、そうした情報に接する機会にも乏しい。

 我々の経済活動がグローバルになるにつれ、ローカル・コモンズの場合とは違って自分の行動の帰結を知ることは少なくなり、グローバル・コモンズを守る意味が実感されることは、ほとんどない。

 我々の向き合うべき課題は、グローバル・コモンズ――安定的でレジリエントな地球システム――を守るために、ローカル・コミュニティでコモンズを守る礎であった帰属意識や守るための社会的な規範、それに則った慣行、違反者が出たときの罰則などの仕組みを、作っていけるかどうか、である。

 ここでいうグローバル・コモンズは、国際法でいう公海、宇宙、南極大陸等のどの国の主権にも属さない領域とも、前述べたローカルなコモンズとも異なり、地球と世界の持続可能性のための新しい概念である。それが危機に陥っているのは、ローカル・コモンズを管理した仕組みが、グローバル・コモンズではうまく機能しないからであろう。いや、そもそも地球システムやその構成要素であるバイオームや生態系、循環を強調して管理することは、人類にとって初の挑戦なのだ。強調による管理の失敗によって「グローバル・コモンズの悲劇」が起こってしまうことは、どうしても避けなければならない。

 グローバル・コモンズを科学的に捉えると、「完新世のような安定とレジリエンスのある地球システム、およびそれを支える重要なサブシステム」である。それは特定の場所(海洋やアマゾン流域)や生態系・生物群系(熱帯雨林や北方林)も要素とするが、それら自体というよりは、エネルギーや物質の循環なども併せた地球の(サブ)システムが安定して機能している状態に。プラネタリーバウンダリーは、人間の経済活動が地球の容量を超えないためのガードレールというわかりやすい形でグローバル・コモンズを提示するものである。

 同時に、グローバル・コモンズには、「将来世代を含む全人類の利益のために人類が協調して守るべき対象」というガバナンスの観点からの規範的な意味もある。これまでの世界のガバナンスのあり方を規定してきた国家主権や私権(占有権、私有権、利用権など)ではそれをうまく管理できないからこそ、今の危機と課題がある。つまり、グローバル・コモンズは、既成概念を超えて、人類の共通利益のために新しいガバナンスを求めている。

 

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