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2021年6月14日 (月)

Clinical 高齢者のポリファーマシーと歯科薬物療法 ③

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2) 歯科では具体的にどのようなケースで遭遇するのか

 口腔乾燥症には糖尿病やシェーグレン・シンドロームなどの疾患により起きるものがある一方で、疾患の治療薬剤が影響する。特に、多種類の医薬品を服用している多剤併用の場合、口渇に関わる薬剤が含まれる可能性が高くなり、口腔乾燥が出現しやすくある。次のような薬物が口腔乾燥のの原因となる可能性がある。

● 抗コリン薬  胃腸薬、鼻炎薬などに含まれるアトロピン、ロートエキスなど

● 抗ヒスタミン薬  風邪薬に含まれるジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンなど

● 乗り物酔い薬  スコポラミンなど

● パーキンソン病の薬  トリヘキシフェニジルなど

● 睡眠薬、向神経薬  ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬など

● 降圧薬  使用している患者数が多い

新潟大学医歯学総合病院の伊藤らによるコホート調査によれば、口腔乾燥感を有する者は 60.4%、服薬中の者は 72.3%、服薬数は 2剤が最多だった。口渇高頻度薬剤の服用者は 18.7%であった。

3) 高齢者の薬物動態 ~加齢による薬物の効き目の変化~

 薬物動態の加齢変化に基づく薬物感受性の増大が高齢者の副作用発現の大きな原因であることを先に述べた。薬物動態とは、投与された薬物がどのように吸収され、組織に分布し、肝臓の酵素により代謝され、排泄される過程であり、この吸収(absorption)、分布(disstribution)、代謝(metabolism),排泄(excretion)の 4つを総称し、それぞれの頭文字をとって ADME (アドメ)という。薬物動態は、ADME のプロセスに分けて考えることができる。

 ※ 高齢者の生理機能の変化に起因する薬理学的影響

吸収(A):加齢による薬物吸収への影響は少ない

分布(D):血清アルブミンが低下すると、薬物のタンパク結合率が減少し、遊離型の濃度が上昇することに注意

代謝(M):加齢とともに低下

排泄(E):腎排泄型の薬物では血中濃度が増加

(1) 吸収(A)

 薬物が経口投与された場合を考える。投与された薬物は消化管を通過して、多くの場合小腸から吸収。小腸で吸収された薬物は門脈を通って肝臓を通り、血液中に入り、全身循環に入っていく。加齢による薬物吸収への影響は少ない。

(2) 分布(D)

吸収された薬物は、体の中で分布する。分布とは、体の中で薬物がどのように存在しているかを示す。血液中では、薬物の一部分は血液中のタンパク(たとえば血清アルブミン)と結合しており、残りがタンパクと結合せずに遊離の薬物として存在。これが、血液中での薬物の「分布」だ。血液中に存在する薬物のうち、遊離の(タンパクと結合していない)薬物だけが薬効を発揮するので、血液中の薬物の分布は薬の効果に影響する。高齢者では血清アルブミンが低下するので、薬物のタンパク結合率が減少し、遊離型の濃度が上昇することから、薬効が強く出やすい。臨床の現場で、患者のアルブミン値を把握することは難しいことが多いが、体重が 30kg 台の場合、投与量を減らすことを考えるとよい。

(3)代謝(M)

 薬物動態でいう代謝とは、薬物を水に溶けやすい構造に変えて体から出ていきやすくすることだ。代謝は加齢とともに低下。

(4)排泄(E)

 薬物が体から出ていくためのもう一つの過程が排泄だ。吸収された薬物の主な排泄経路のひとつに尿がある。尿中排泄に重要な役割を果たしているのが腎臓だ。腎臓は、血液中の薬物をそのまま未変化体として尿中に排泄する役割を担っている。加齢により腎臓の機能は低下する。従って、体内から腎臓を介して未変化体として尿中に排泄される薬物(腎排泄型薬物)は、加齢の影響を受けることになる。―――(詳細は後述)。

 

 

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