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2021年6月 8日 (火)

グローバル・コモンズの責任ある管理 ④ B

続き:

 グローバル・コモンズを守るための道具立ての第二は、グローバル・コモンズ保全のパフォーマンスを計測する指標作りだ。グローバル・コモンズを守る活動は世界中の国々で行われる必要がある。これまでも、クライメット・アクション・トラッカー等、気候変動に関する各国のパフォーマンスを評価する試みはあった。2020年12月に東京大学グローバル・コモンズ・センターが国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(Sustainable Development Solutions Network : SDSN) やイェール大学と開発した「グローバル・コモンズ・スチュワードシップ・インデックス」(パイロット版)は、気候変動のみならず、生物多様性、土壌、海洋などの 6つのグローバル・コモンズの構成要素について、各国がどのコモンズをどの程度守っているかのパフォーマンスを計測するものである。ここから、国ごとに多様なコモンズ保全への貢献の仕方があることがわかる。またこのインデックスは、国内生産のみならず、輸入を通じた海外の環境への波及効果もあわせて把握する。例えば、日本については、全体の成績も B と良くないが、海外効果は CCC (グローバル・コモンズ・スチュワードシップ・インデックスの評価)とさらに悪い。生物多様性については、国内生産だけみれば比較的良い成績のBBであるが、海外効果は CCC だ。これは生産過程が高い環境負荷がかかった輸入品が多いためと思われる。この例は、グローバル・コモンズへの貢献は、国際的なバリューチェ―ンを通してみることが重要であり、その改善のためには海外パートナーと一緒に努力する必要があることを示している。グローバル・コモンズ・スチュワードシップ・インデックスは、各国のコモンズ保全への貢献度を、科学的に計測し公表することによって、国際的な協調の機運を高め、また政策論議を活発にしていくことを目指したものだ。

● 実践のための工夫

 グローバル・コモンズの責任ある管理のための道具立ての第三は、「実践のための工夫」だ。

 グローバル・コモンズの保全が実行に移されていくには、経済システムの変革が必要。具体的には、エネルギー・システム、都市システム、食料システム、生産消費システムの変革をとり上げてきたが、これは容易ではなく、ビジネス、政策が協働して動いていく必要がある。

 最近の動きで注目されるのh、中央政府の政策担当者だけでなく、非国家のアクター (non-state actors) である地方政府、ビジネス、投資家、消費者、市民団体が、重要な課題ごとに枠を超えて連携し、協働のためのプラットフォーム(マルチステークホルダーによる協働)を創ってきていることである。具体例としては、一次産品の生産による熱帯雨林の乱伐採に歯止めをかけるための「Tropical Forest Alliance」や、プラスティックの使い方をより循環型にするための「New Plastic Economy」のプラットフォーム、電化製品の廃棄をデザインから考え直す「E-Waste」同盟など、バリューチェーンに連なる企業、消費者、投資家、政府を巻き込んだ協働のためのプラットフォームが、無数に活躍している。

 これらの連携プラットフォームは、メンバーによるコミットメントの強制力、アカウンタビリティ、資金貢献など重要な要素において、多様な形態があり、鍵となるシステム転換の推進役として役割を果たしている。こうしたアライアンスは、グローバル・コモンズを守るためのシステム転換に多様な主体を巻き込む必要性があることに鑑みて、重要な実践の手法である。中央政府に重点を置いた従来の枠組みでは達成できないグローバル・コモンズの管理の新しい有力な実践方法の一つとして注目される。

 さらに、経済モデルそのものの変革が必要である。

 人新世における経済モデルは、グローバル・コモンズを管理するための新たな特徴を備えている必要がある。それはグローバル・コモンズの重要な要素であるにもかかわらず、現行の経済モデルでは十分評価されてこなかったもの、たとえば、自然資本を取り入れることなどが考えられる。最近になってようやく、これまでは外部不経済としてしか認識されてこなかった環境負荷や自然資本による貢献を、統一されたルールで価値づけし報告していく機運が盛り上がっている。企業と金融の両方が参画したルール作りを進め、自然資本を経済取引に組み込むようにすることが重要である。

 

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