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2021年6月11日 (金)

グローバル・コモンズの責任ある管理 ⑦

続き:

7 いま、我々がなすべきこと

 こうした新たな機運にもかかわらず、グローバル・コモンズを守る進捗は、世界的に見て絶望的に遅い。

 2015年パリ気候変動合意の立役者であった気候変動枠組み事務局長クリスティアナ・フィゲレス(当時)は、東京フォーラムで(2020年12月)、我々が地球の安定性を取り戻すため、2050年に脱炭素を達成するためには、大きく舵を切る必要があり、そのために残された時間は 10 年しかない、と述べた。

 本稿で繰り返し述べてきたが、この緊迫した状況は、いくら強調されてもよい。彼女の後任であるパトリシア・エスピノーザは、公約と現状がここまでかけ離れた国際合意はめったにない、と警告した(2021年3月)。我々は、自分たちの未来を確かなものにするために、システム転換への努力を加速する必要がある。に、

 残念ながら今の、この専門家からのメッセージに、我々の認識と行動が追いついていない。科学からのメッセージを理解し、経済や社会をどのように変革すべきかを考える知力、行動を起こす胆力を、我々はまだ十分に発揮していない。

 いま我々は、地球と人類の関係をめぐって、いかに特別な時期にいるかをよく理解しなければならない。グローバル・コモンズを責任をもって管理し、次世代に引き継ぐという重大な使命を我々は背負っているのだ。この責任から逃れるわけにはいかないのである。東京大学では、2020年8月に「グローバル・コモンズ・センター」を設立、内外の志ある企業や機関と連携してグローバル・コモンズを守るための試みに着手。

 先に紹介したグローバル・コモンズ・スチュワードシップ・インデックスの開発は、その最初の成果だ。

 COVID-19 は、我々がまさに人新世にいる現実をつきつけた。21c. になってから頻発する人獣共通感染症は、人間の活動範囲が、食料生産・インフラ開発などを通じて、それまで脅かされていなかった生態系を攪乱していることが一因である。この意味で、まさに人新世時代の疾病だ。その根本的な対処は、人間活動と自然システムの安定的な関係の回復であると同時に、変異株が威力を増さないうちになるべく多くの人が全世界で免疫を得ることにある。その精神は、誰もが安全でない限り、誰も安全ではない。(nobody is safe until ererybody is safe) というグローバル・コモンズの精神を象徴するものだ。

 グローバル・コモンズという人類の共有資産を守るという重大な使命の前に、我々は何をすべきだろうか。グローバル・コモンズを管理するためのフレーミング、道具立て、実践について述べてきた。そして新たな形の経済モデル、ガバナンスの在り方が必要であることも述べた。

 しかし、こうした試みを、スケールとスピードをもって実行していくのは、最後は「人」だ。既存の枠組み、たとえば国家、企業、組織の枠を超えて、課題ごとに横連携でリーダーシップを取ることのできる人、自分が安全と感じる居心地の良い場所から踏み出して、新たな仲間と行動を開始できる人、こうした真のリーダーが今必要がある。そして、我々一人ひとりが、それぞれの立場でリーダーシップをとっていくこと、これがグローバル・コモンズを守っていくために、いま最も求められていること。

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