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2021年6月18日 (金)

Clinical 高齢者のポリファーマシーと歯科薬物療法 ⑦

続き:

1) 歯科において注意すべきハイリスク薬との相互作用

 歯科で頻繫に使用される NSAIDs 等の鎮痛薬について、高齢者の安全な薬物療法に留意するとして、膨大な薬の中から、相互作用としてどのような薬に特に注意したらよいのだろうか。一般歯科医院で行われている抜歯などの観血的歯科処置時のとうやくかんりには、特に抗血栓薬を例として考えたい。

 まず、日頃の臨床の中で、ハイリスクと言われている薬と鎮痛薬との相互作用に注意を払う習慣をつけることを提案する。ハイリスク薬については、日本病院薬剤師会『ハイリスク薬に関する業務ガイドライン(Ver 2.2)』や日本薬剤師会『薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第 2 販)』などのガイドラインが公表されている。

 ガイドラインでは、ハイリスク薬の特徴を実務上注意すべきポイントという観点から設定されている。

   ※ハイリスク薬一覧S

   ●抗悪性腫瘍薬   ●免疫抑制薬   ●不整脈用薬   ●抗てんかん薬

   ●血液凝固阻止薬   ●ジキタリス製剤   ●テオフィリン製剤   ●カリウム製剤

   ●精神神経用剤   ●糖尿病用薬   ●膵臓ホルモン製剤   ●抗HIV薬

 12種類の薬剤がハイリスク薬とされる。A群ではアスピリン以外はハイリスクには分類されないが、抗凝固薬(B群)、抗血小板薬(C群)、副腎皮質ステロイド薬(D群) はすべてハイリスク薬である。

 抗凝固薬(B群)や抗血小板薬(C群)などの抗血栓薬、副腎皮質ステロイド薬(D群)の併用患者では NSAIDs の使用によりこれらの薬効が増強する恐れがあり、これらの使用患者への NSAIDs の使用は高齢者においては特に注意が必要である。

 抜歯等の観血的歯科処置では止血が重要な問題となる。以前は抜歯に際し、抗血栓薬の休薬期間があったが、今では抗血栓薬の内服継続下での抜歯が推奨されている。『抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2020年版』では、抗血栓薬の服用患者においてこれらの薬剤を継続下に抜歯することが推奨されている。もちろん適切な局所止血が行われることが前提であり、対象はいわゆる難抜歯ではなく、普通の抜歯を対象とする。

 B群の抗凝固薬は高齢者いおいて特に慎重な投与が求められる。長い間使用されてきた抗凝固薬ワルファリンに代わり、直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulanes:DOAC) の使用が近年著しい。

 DOAC であるダビガトラン、アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバンは、ワルファリンと比べて出血のリスクが少なく、高齢患者では使用しやすい薬剤であるという。但し、高度の腎障害のある患者では DOAC は使用禁忌。また、ワルファリンは定期的に PT-INR を確認することにより、抗凝固作用がモニターできるが、DOAC は PT-INR のモニターは不要。今後、これらの薬剤によるポリファーマシーの問題に遭遇する機会も多くなることが予想される。

 これら複数の抗凝固薬(B群)、抗血栓薬(C群)を投与されている患者の抜歯はどう考えたらよいのだろうか。以下に、検討する。

(1) 抗血小板薬 2 剤を併用している場合

 カテーテルインターベンション(心臓カテーテル治療)後においては、比較的新しい抗血小板薬であるプラスグレル、チカグレロルが、従来から使用されてきた抗血小板薬であるアスピリンと併用されることが多い。これら抗血小板薬 2剤(dual antiplatelet therapy:DAPT)が使用されている場合。

(2) 抗凝固薬と抗血小板薬の併用

 カテーテルインターベンションが心房細動を合併していて、抗血小板薬 1剤と抗凝固薬の 2剤併用(ダブルセラピー)や血小板薬 2剤と抗凝固薬の 3剤(トリプルセラピー)の適用となる場合。従来のワルファリンによるトリプルセラピーに比べて、DOAC と抗血小板薬クロピトグレルを用いたダブルセラピーの優位性を示す臨床試験結果が示されている。

(3) 抗血栓薬と鎮痛薬の併用

 術後の疼痛管理のため、(1)、(2) のケースにさらに鎮痛薬が投与される場合。

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