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2021年6月13日 (日)

Clinical 高齢者のポリファーマシーと歯科薬物療法 ②

続き:

1. (第一部)ポリファーマシーと高齢者の薬物動態

 高齢者(日本老年医学会の定義は第二部を参照)では、若年者に比べて薬物による副作用の発生頻度が高く、重症例も多い。厚労省のまとめた『高齢者の医薬品適正使用の指針』によれば、高齢者における薬物の増加には、

   高齢者における副作用増加の要因とは

疾患上の要因 複数の疾患→多剤併用 慢性疾患→長期服用 症状が非定型→誤診に基づく誤投与

機能上の要因 薬物動態の加齢変化→過量投与 認知機能の低下→アドヒアランス低下

社会的な要因 過小医療→投薬中断

のような多くの疾患上、機能上、そして社会的な要因が関わり、薬物動態の加齢変化に基づく薬物感受性の増大と多剤服用がその二大要因である。

1) ポリファーマシーとは

 多剤服用の中でも健康に害をなすものを、特にポリファーマシーという。poly(多数)+pharmacy(薬局)である。日本老年医学会は、『高齢者の医薬品適正使用の指針』を参照しつつ『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015』をまとめている。

 ポリファーマシーとはいくつ以上の薬剤を併用していることなどであろう?ポリファーマシーの定義を 5剤以上の処方としている文献が多い。しかし、薬剤の数自体が問題なのではなく、その患者にとって本当に必要な薬が処方されているかどうかが問題だということを忘れてはならない。高齢者は、単剤のみで治療が行なわれるケースはほとんどなく、多剤併用が一般的であるので、ポリファーマシーは高齢者の薬物療法において特に大きな問題となる。つまり、ポリファーマシーは、単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して副作用のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランスの低下等の問題につながる状態なのである。

 ある薬物の副作用に対して新たに別の薬剤が処方されるといった、「処方カスケード」大きな問題である。

※ 服薬アドヒアランス:患者自身が自分の病気を受け入れて、ドクターの指示に従って積極的に薬を用いた治療を受けること。

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