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2021年6月 4日 (金)

グローバル・コモンズの責任ある管理 ①

石井菜穂子(東京大学教授、同大学理事)さんは「世界 5」に小論を載せる。コピーペー:

1 「人新世」という特別な時代

 私たちは今、期せずして、住み慣れた「完新世」を去って、全く未知の地質時代「人新世」に踏み出すという、特別の時代を生きている。

 人類は、近代的なテクノロジーを活用し化石燃料由来のエネルギーを際限なく使用することで、経済発展を遂げてきた。その前提は、「地球はとても大きく我々の世界は小さいので、我々が何をやっても地球は大丈夫だ」という世界観であった。しかし、現実には、我々の経済活動は、まさに繫栄の礎であった安定的でレジリエント(自己回復力のある)な地球システムを壊しつつある。世界中で頻発する異常気象や地球規模の生物多様性の喪失は、その証左だ。「我々の世界はとてつもなく大きくなり、地球は小さくなって、我々の活動が地球のキャパシティを超えるようになってきた」(ヨハン・ロックストローム)のである。

 科学者によれば、20c. 半ばまでに人類は地球システムの機能やプロセスに影響を及ぼす圧倒的な存在となった。これを「人の時代」、あるいは「人新世」(the Anthropocene)と呼ぶ。「人」と「地球」の関係が根本的に変わった時代である。そこでは、人は自分たちのよって立つ地球を、自分たちの存続と繫栄のために管理する責任が生まれる。しかし我々はこの科学的事実とその意味するところをまだ十分理解しておらず、この時代を生き抜くための新たな体制を整えてもいない。

 科学からのメッセージは明白である。我々は今、人類史上の岐路にいる。このまま地球温暖化が止まらず、灼熱地獄に墜ちるのか、地球の安定性とレジリエンスを回復できる経路へ舵を切り直すのか。科学者の忠告通り平均気温上昇を今世紀末に 1.5 ℃未満に抑えるには、2050 年に脱炭素(カーボン中立)を達成すること、そしてそのために2030年までにカーボンを半減することが必要になる。これは現在の経済社会の大きな転換にによってしかなし得ない。この人類にとっての一大作業に残された猶予は、あと 10 年である。

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