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2021年7月 8日 (木)

Science 幹細胞を用いた歯周組織再生治療の可能性について ②

続き:

1. これまでの歯周組織再生治療

 失われた歯周組織を再生させることは古くから歯周治療の大きな目的であった。しかし、プラーク・歯石除去などの原因除去的治療法を行った後の露出根面上には、組織学的に長い上皮性の付着(long-junctional epithelium) と呼ばれる上皮細胞とセメントあるいは象牙質間の結合が生じてしまい、本来の歯と歯周組織の結合である歯根膜繊維の一端がセメント質に埋入された sharpy's fibers を介した付着様式(結合組織性付着)の形成が非常に限られていることが知られていた。これは病原因子を取り除いた後に開始される歯周組織の創傷治癒 において、その後に形成される付着様式が、創傷治癒の場に最初に遊走した細胞の種類に依存することで説明されている。すなわち、上皮細胞が遊走した場合には上皮性の付着が生成され(ほとんど歯周治療はこのケースに該当)、骨由来の細胞の場合には骨性癒着(ankylosis)、結合組織由来の細胞の場合には根面の吸収が生じ、そして歯根膜由来の細胞が遊走した際にのみ、新生セメント質、歯根膜、歯槽骨の形成による歯周組織再生が起こるということだ。

 この非常にクリアな理論を臨床に応用し、初の歯周組織再生治療となったのが誘導組織再生法 (Guided Tissue Regeneration : GTR) である。上皮の細胞は他の細胞より遊走・増殖速度が速いため、GTR法では、この細胞の侵入を物理的な膜(GTR膜)を設置することで排除し、同時に再生に重要な歯根膜由来の細胞を創傷治癒の場所へ遊走させる。この治療法は、組織学的にも新たなセメント質、歯根膜、歯槽骨の形成を誘導することが確かめられており、現在では健康保険診療での治療が認められている。

 歯根形成期の一時期にエナメル基質タンパクが発現し、作用することに注目した Hammarstrom らの研究から開発され、現在臨床に広く用いられているのがエナメルマトリックスデリバティブだ。エナメル質形成期のブタ歯胚から回収したタンパク分画であるエムドゲインは、歯根膜細胞の遊走・増殖を促進する作用や抗炎症作用を持ち、フラップ手術時に露出した歯根表面へ塗布することによって、歯根膜由来細胞の選択的な遊走を促し、新生セメント質、歯根膜、歯槽骨の再生を誘導するとされている。こちらも組織学的な歯周組織再生が確かめられており、保険適用外ではあるが、日本でも治療に用いることができる。

 さらに最近、保険診療で認められた再生治療材料に塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF/FGF-2、リグロス)がある。FGFは強力な細胞増殖活性と血管新生作用をもつことから、虚血性疾患や難治性潰瘍を含む色々な疾患治療にも用いられている増殖因子である。大阪大学の村上伸也教授のグループによる精力的な研究によって、歯周組織欠損への bFGF の投与が歯周組織再生を誘導することが明らかになり、日本発の初の歯周組織再生治療材料として臨床応用されている。

 このほか、増殖因子としては海外では PDGF-BB や BMP-2 が歯周組織再生材料として認可されている。

 このように、歯周組織再生に利用できる方法、材料の選択肢は増えつつあると言えるが、適応症例を見てみると、いずれも残存骨壁数の多い垂直性欠損となっており、狭く深い骨欠損のさらに骨欠損底部においての再生が達成されるのが現状である。

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