コンピュータシステムがもたらした冤罪事件 ①
指宿 信(成城大学法学部教授)さんは載せている。「世界 6]より コピーペー:
明らかになった大規模冤罪
2019/12/16、英国ロンドンにある高等法院が、詐欺や窃盗などで有罪とされていた元・委託郵便局長550人以上で構成された原告による無実の訴えを認め、郵便公社(Post Office) に対して原告への謝罪と和解金5780万ポンド(約86億7000万円)の支払を命じる判決が言い渡された。
事件の発端は、郵便局の窓口の現金支払い業務を管理するコンピュータシステム、ホライズン(Horizon)である。1万2000カ所に上る英国郵便公社郵便局の抱える2800万人という膨大な数の顧客向けサービスのために導入された会計システムが、決済に不足分があると表示したのである。そのため、多数の委託郵便局長らが不足を弁償させられたり、実刑に処せられたりすることになった。
今回の判決で高等法院のピーター・フレイザー判事は、システムに勘定不足の原因があったとする原告らの主張が正しいと認めた。補足文書を含めると400ページを超える大部の判決の中で判事は、システムのバグ、エラーそして不具合がホライズンの計算に影響を与えていた経緯を詳細に検討し、公社がホライズンの信頼性を明らかにしておらず、公社の当初の原因究明のための調査は不十分だったと認定した。それまでホライズンには問題がないと主張してきた公社も、ようやく元局長らに謝罪の意志を表明した、他のシステムと比べて脆弱であったことを認めるに至った。
判事は、公社が元局長らの訴えに耳を貸さず取り続けてきた態度について、比喩を使いながら次のように厳しく糾弾した。
「公社によって取られたこのアプローチは、実際のところ現実に発生したことを無視したただの主張と否定にすぎなかった。少なくともホライズン事件の裁判で、私の前に呼ばれた証人たちが加担していた限りにおいては。それは、21c. においてこの地球が真っ平だという主張を維持するものに匹敵するものだ」
この民事裁判に続き、2020年3月には有罪判決を受けた元局長らが起こした最初の再審申し立てが刑事事件再審委員会によって認められ、有罪判決に重大な疑問があるとして再審公判が開かれることとなった。
※英国では、刑事事件の再審査請求は裁判所ではなく独立した委員会が取り扱い、有罪判決を維持することが妥当でないと認められると裁判所に再審を付託する。
英国の刑事司法はこれまで陪審裁判や当番弁護士制度をはじめ世界中の刑事司法制度の手本となってきた。そうした歴史を誇る英国で、史上最大の誤判冤罪スキャンダルが明らかになってきたのである。
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