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2021年7月15日 (木)

Science 幹細胞を用いた歯周組織再生治療の可能性について ⑨

続き:

おわりに

 幹細胞移植による歯周組織再生の研究は、この 20年間に数多くの研究者、研究機関、実験モデルにおいて検証され報告されてきた。その結果のほとんどは、歯周組織が細胞移植によって誘導・ぞうきょうされるものであり、幹細胞移植が有力な歯周組織再生治療に未解決な点も数多く残されているのが現状。

 例えば、移植細胞として数々の細胞種が試されているが、最も適した細胞の決定には至っていない。なぜ、セメント質や歯根膜などの歯周組織を形成する可能性の低い歯髄や歯肉、脂肪などの組織に由来する間葉系幹細胞を移植しても、歯周組織は再生するのだろうか。この時、歯周組織は再生されるのに、なぜ象牙質や脂肪組織が形成されないのだろうか。

 幹細胞を移植して細胞の自律的な増殖・分化に期待する治療は、実際には細胞の挙動を制御できないため、予期せぬ結果をもたらす危険性も内包している。幹細胞移植による組織再生のメカニズムの解明は、細胞治療の安全性の観点からも重要であると考えられる。

 細胞を移植して疾患を治す治療には、未来医療のような大きな夢を抱かせるイメージがある。しかしながら、細胞を患者の体外で培養し再び体へ戻すという治療は、いまだ非常に限られた研究レベルで行われているものであり、医療体制が確立しているとは言いがたい。細胞治療にかかる費用を考えても、細胞を安全に培養し、医療材料として細胞を生産するためのコストは非常に高く、日常的な歯科臨床を考えると現状では現実的とは言えない。歯科治療には確立されたいくつもの治療法があり、生命や生活の質に著しく関わる大きな医科疾患と同列に細胞治療を語ることは難しい面もある。

 幹細胞によって歯周組織が再生するという現象から、我々は作用機序や組織再生に必要な条件など、新たな情報を得ることが可能であり、これをきっかけに新たな歯周組織再生治療の開発も期待できる。

 

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