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2021年8月 1日 (日)

祝賀資本主義のグロテスクな象徴 ③

続き:

◉ 無敵の五輪ブランド構築

 ジュールズ・ボイコフ氏の祝賀資本主義にあえて付け加えることがあるとすれば、私(本間)は「五輪ブランド構築」と「メディアの徹底的な抱き込み」を提案する。

 言うまでもなく、五輪は巨大な商業イベントだ。TV視聴者の数だけならサッカーワールドカップに及ばないが、参加する国とアスリートの数(東京大会は205カ国、約12000人)、や競技数(33競技、339種目)は間違いなく最多であり、世界中で行なわれている様々なイベントの中でも最大である。

 この巨大イベントを主催するのがIOC(国際オリンピック委員会)であるが、同団体は1984年のロサンゼルス大会から五輪の商業化に舵を切り、プロ選手の参加を解禁して話題性を高め、協賛企業からのスポンサー料、TV局からの莫大な放映権料を両輪として、巨額の収益を上げてきた。そして4年に一度、世界各地で夏と冬の大会を開催し続けるために構築したのが、その比類無きブランド力である。

 そのブランド構築は今に始まったことではなく、1984年のロサンゼルス大会で商業五輪になって以来、スムーズなスポンサー獲得のために営々と行なわれてきた。その代表的なものがオリンピック憲章の制定であるが、そこには、「オリンピック・ムーブメントの目的は、いかなる差別をもともなうことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあうオリンピック精神に基づいて行なわれるスポーツを通して青少年を教育することにより、平和でよりよい世界をつくることにある」とある。だがこれだけでは、世界中で4年に一度の巨大イベントを開催し続けるための資金確保には不足なので、各開催都市はそれぞれ様々なテーマを掲げてきた。

 東京五輪では「多様性と調和」をテーマに、

・ダイバーシティ&インクルージョン(共生社会の実現)

・持続可能性(気候変動、資源管理、生物多様性、人種)

・アクセシビリティ(障害の有無にかかわらず、全ての人が参加できる五輪)

 さらにジェンダー平等や、あらゆる差別への反対など、およそ人類社会が抱える問題全てに対応できるような主張が掲げられてきた。

 その結果、世界中の様々な企業が標榜するスローガンと巧みにシンクロすることとなり、スポンサーとして取り込むこと可能となった。これだけ理想を並べておけば、そのどれかに必ず引っかかる、と言うわけ。

 まるで五輪が世界を正しく導く万能装置かのような権威を纏い、開催国の国民の共感を集めて幻想を抱かせることで、巨額の資金を開催都市のある国家と都市に拠出させ、スポンサー企業を集めてきたのである。

 

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