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2021年8月26日 (木)

カーボンプライシング ⑦

続き:

■ 国境炭素調査

 日本企業が今、注意を払っているのが、欧州が進める国境炭素調整の導入である。2019年12月に就任したフォンデアライエン欧州委員会委員長は、炭素排出に関する国境炭素調整を政策手段として明文化した。EUへの輸入品に対して、カーボンプライシングを課そうというのである。EUは脱炭素に向けて排出削減目標を高く掲げた。―出てきたのが、この国境炭素調整である。方法としては、関税として炭素税を課す考え方や、排出枠の購入を義務付ける方法等が考えられている。

 国境炭素調整に期待される効果はどのようなものだろうか。第1に、排出規制に熱心でない国の温暖化対策を促進することが期待される。第2に、EUでの生産及びそれに伴う排出が海外に移転しないようにすることが期待される。即ち、欧州域外で排出が増加すること(炭素リーケージ)を防ぐことが期待されている。第3に、排出規制の進んでいない国で製造される製品に対して炭素税を課し、価格を上昇させることにより、EUのエネルギー集約産業の競争力を守ることができるとされている。これは、EU域内に輸入される製品に炭素価格を課そうという制度だ。輸入品に炭素税、あるいは輸入枠の購入を義務付けることにより、EUETSの炭素価格を負担する域内企業が不利益を被らないようにする。同時に、EUの企業活動がEU域外に出る炭素リーケージを防ぐ目的がある。

 但し、EUと同等の排出削減に取り組む国に対してはこの国境炭素調整を課さないとしている。問題は、「EUと同等の排出削減取り組み」をどう評価するかである。一番シンプルな方法は、輸出国でのカーボンプライシングの価格を見て、排出削減を評価する、という方法だ。この観点からも、日本国内でカーボンプライシングを入れていくことに合理性があると考えられる。

 

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