認知症の人の口を支える視点:ガイドラインからの提言
■講師 平野浩彦(東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長・研究所 自立促進と精神保健研究チーム 研究部長)さんの文を載せる コピーペー:
我が国における認知症患者の急激な増加を受け、2015年に認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が発表された。その中では歯科医師の認知症対応力向上研修実施が明文化されています。
つまり、「歯科医療従事者に対して認知症の人への歯科診療を通じて口腔機能管理を適切に行うことが公的に求められた」ということ。さらに言い換えれば「認知症を歯科治療をできない理由にしない」ことが求められている。
高齢者の口腔に目を向けると、8020達成者が2017年には50%を超え、歯科インプラントなどの高度な医療を受けている場合も多く、その口腔環境は多様であり、継続的な口腔管理が必要不可欠であることは誰もが認識しているところです。
その一方で、高齢期では認知症発症のリスクも急速に高まります。認知症の進展は自立した口腔清掃を困難にさせ、う蝕や歯周病の発症リスクが上がる。さらには介護者などによる支援も拒否される場合もあり、口腔管理は一層困難となる。
つまり、現在の高齢者は歯を多く残しているが認知症発症リスクも高く、一度認知症を発症してしまうと自身の歯のケアや歯科治療の受容も困難となり、残した多くの歯がトラブルの原因となる可能性が高い状況下にあるといえます。
さらに残念なことですが、認知症を理由に、歯科医院における歯科治療の継続が困難になってしまうことがあるのも事実です。つまり、歯科界には、「高齢期に自身の歯を多く残す歯科口腔保健活動(8020運動)を進めた以上、認知症を発症しても自身の歯さらには口の機能を守る指針の提示」が求められていました。こうした背景を踏まえ、令和元年6月に『認知症の人への歯科治療ガイドライン』が発刊された。このガイドラインは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究でのガイドライン作成班によって作成された。
平野の講演が、本ガイドラインの趣旨などを踏まえ、皆様と認知症の人への歯科治療を考えていく機会になれば幸いです。
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