Science 口腔粘膜上皮性異形成病変に対する蛍光診断の有用性 ①
里村一人(鶴見大学歯学部口腔内科学講座教授)さんと舘原誠晃(鶴見大学歯学部口腔内科学講師)さんの研究論文です。コピーペー:
はじめに
世界保健機関 (World Health Organization : WHO)の International Agency for Research on Cancer Observatory)のデータによると、2020年における G10(主要 11か国)の口腔癌の国別発生率は、人口10万人あたりイギリス5.1人、アメリカ4.2人、フランス5.4人、ドイツ4.3人、イタリア2.8人、カナダ4.2人、ベルギー4.6人、オランダ4.3人、スイス3.9人、スウェーデン3,1人、日本3.4人であり、わが国は先進国の中で珍しく2018年から0.4人増加している。
一方、口腔癌による国別死亡率(2020年)をみると、人口10万人あたりイギリス1,2人、アメリカ0.65人、フランス1.2人、ドイツ1.1人、イタリア0.91人、カナダ0.82人、ベルギー1.3人、オランダ0.78人、スイス1.1人、スウェーデン0.87人、日本0.72人であり、いずれの国においても治療が奏功していることがうかがわれるが、特にアメリカとカナダにおいてはわが国よりも発症者数に対する死亡者数の割合が低い。
これは、過去20年近くにわたって国家政策の一環としてアメリカ歯科医師会 (American Dental Association : ADA)を中心として進められてきた口腔癌予防キャンペーンによるものと考えられ、適切な検診等が行なわれれば口腔癌の早期発見・早期治療が可能であることを示している。
一方、東アジア・東南アジア・南アジアの国々に目を向けると、インド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュ、パプアニューギニア、アフガニスタン、カンボジア、ラオス、タイでは日本より発生率が高く、噛みタバコ等の生活習慣が大きく関係しているものと考えられる。また死亡率でみると、パプアニューギニア、インド、パキスタン、スリランカが群を抜いて高く、次いでアフガニスタン、カンボジア、ラオス、タイなどが続き、わが国より低いのはわずかにトルコ、韓国、ブルネイ等のみである。今後わが国は、これらのアジアの国々における口腔癌の早期発見・早期治療の実現にも積極的に貢献する必要があるものと考えられる。
« ESG投資が変える社会 ⑦ | トップページ | Science 口腔粘膜上皮性異形成病変に対する蛍光診断の有用性 ② »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- Report 2023 感染症根絶 ④(2023.11.30)
- Report 2023 感染症根絶 ③(2023.11.28)
- Report 2023 感染症根絶 ②(2023.11.24)
- Report 2023 感染症根絶 ①(2023.11.15)
- Science 糖尿病における歯周病 ~基礎研究からその問題点を考える~ ⑦(2023.11.11)