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2021年9月12日 (日)

Science 口腔粘膜上皮性異形成病変に対する蛍光診断の有用性 ③

続き:

2. 光線力学的診断と 5-ALA 酸

 何らかの光感受性物質を投与し、腫瘍に特異的に取り込ませ蓄積させた後に特定波長の励起光を照射し、その物質が発生する特定波長の蛍光を検知することにより、肉眼的には認識困難な微小な腫瘍を診断する方法を光線力学的診断 (photodynamic diagnosis : PDD) という。すでに脳神経外科領域や泌尿器領域等においては、術前や術中の診断に応用され、その有用性が示されている。特に、副作用が最も少ない光感受性物質である 5-ALA を用いた PDD が現在注目されている。

 5-ALA は動植物の生体内に含まれる天然アミノ酸の一つである。生体外より投与された 5-ALA は細胞内に取り込まれ、ミトコンドリア内でプロトポルフィリンⅨ (PpⅨ) に変換される。正常細胞において、このPpⅨはさらに鉄イオンを配位することで、血液中のヘモグロビンや薬物代謝酵素である P450 を構成するヘムにまで代謝される。

 一方、癌細胞ではヘムへの代謝が障害されており、PpⅨが細胞内に蓄積する。このPpⅨには光反応性があり、405 nm の青紫色光で励起すると 636 nm/ 705nm の赤色蛍光を発するという特徴がある。

 この性質を利用して癌細胞のみを赤色に発光させることにより、正常細胞から腫瘍性病変を鑑別することができ、口腔粘膜においても、 5-ALA を局所投与した後に 405 nm の青紫色光を照射すると、腫瘍細胞内に蓄積した PpⅨ が赤色蛍光を発光し、腫瘍細胞を可視化することができる。癌の周囲には通常炎症等が存在しているため、大多数の症例においては、赤色蛍光領域の周囲に正常な組織構造に由来する緑色蛍光の欠損部が認められる。

 しかしながら、本症例は視診、触診や臨床経過等から明らかに口腔癌が疑われる症例であり、このような症例においては本診断法は適用する意味はあまり大きくない。

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